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落ちた紅の花びら 〜A petal named Liselle〜  作者: マメ
1章 白い綻び編

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第4-2話 〜溶かせない想い、拭えない記憶〜



月の隠れた夜に飛び出す二人。

闇の中に三体の標的と、齧られる二つの獲物の姿があった。


暗闇にひゅるるっと音を立てて飛来するリアンの黒い外套。

しかしこの漆黒は、暗殺者の襲来を告げる気はないのだろう。

標的の一人は、ふわっと風を受けた気がして振り向くが何も見えない。

その瞬間に凍った地面に響く音の中、そこに頭を潰されていった。


「ヒィやっ!?」

と、その音に肩を窄める標的二人。

その目に闇から浮かぶ牙が写るその刹那、二つの首が宙に舞うのだった。

その速さはレイピアに一滴の血を付けることもなく振られ、そして静かに鞘に収めるクロエだった。



——空に月が帰って来た


そして、青白いスポットがそこを照らした。

「うわぁ!」

と、突然現れた惨状に驚き慄く少年の姿。

その傍に、声もなく怯える少女が腰を抜かしていた。


どうやら、『獲物』の二人は、致命傷とまではいっていなかったようだった。

「大丈夫?」

と声を掛けるクロエ。

「……は、はい」

恐怖と痛みに震えながら、齧られていた少年が答える。

クロエは少女にも、

「あなたは?」

と声をかけたのだが、どうやらリアンから目が離せないようだった。


「リアン、その子が怖がっているよ」

と、リアンの足元に目を向け怪訝そうにクロエ。

「あ、ああ!?」

と、リアンは踏んだままのその頭から足を下ろし、それを隠すようにその前に立った。


そして、少し落ち着いてきた少女、

「あ、ありがとうございます。私は少し引っ掻かれた程度なので……」

と、無事なことを伝えた。

「なんでこんな闇夜に、外出なんか?」

と、責めるような口調のクロエ。

「実は……」

と、パウラと名乗るその少女が話を始めるのだった。



話はこうだった。

そこに頭を潰され死んでいるのは、幼馴染で、

「今夜三人で星を見よう?」

と彼に誘われて来たところを、吸血鬼に襲われたのだと言う。

「まさか、そいつが手引きしていたのかい?」

とクロエ。

リアンの足元をチラッと見ながら頷くパウラ。

そして、クロエに首を刎ねられた二人はつい先日、この村にやって来たばかりのよそ者だった。

彼はこの二人と連むようになってから、様子が変わっていったのだと言う。


「それで、そのことを聞こうとして、ガイサルと三人でここに来ました」

と、少年を指差しそう話すパウラだった。

(友達を嵌めるとはなんて野郎だ)

とクロエは呟きながら、さっきから黙り込んでいるリアンの方に目をやった。


心ここに在らずのリアン。

それを不審に思い声を掛けるクロエ、

「リアン、ねぇリアン!」

応答どころか、その目がピクりとも動かない。

(なんだってんだい?)

黙ったまま目を細め、リアンを見つめるクロエ。

その手は彼の肩に届くことなく躊躇うのだった。



生きたまま、食べられそうになっていた少年。

それを見た時、胸の奥深くに閉ざされていた、あの記憶が……

まるで時の狭間へと、引き寄せられていくように……

呼吸だけが、次第に荒くなって行くリアン。



そして、その意識は遠退いていくのだった——


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