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落ちた紅の花びら 〜A petal named Liselle〜  作者: マメ
3章 幕開け編

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第35-3話〜再会〜


「おお、これはルキウス殿、此度のユトレーデルへの助力、感謝しております」

と、この無礼者も、ルキウスには一目置いている様であった。

「ああ、それはいいのですが、ここサングィナトーレスで総督の名を、その様に呼ばれるのは差し控えて頂いた方宜しいかと?」

そう、出来るだけ柔らかく指摘した。

「おお、済まなかった」

シリウスの謝罪も聞かず、

「アダムノア、総督にシリウス殿の訪問を」

と、促すルキウス。

それに頷き歩き出すアダムノアだった。

このルキウスという男。

サングィナトーレスには比較的新しい人材だった。

多くの者はその出自を知らない。

その内の一人が当のアダムノアだった。

アダムノアは勝手に自分こそ総督の腹心、サングィナトーレスの二番手であると思い込んでいた。

ところがこのルキウスの登場により、あっさり覆されたのであった。

しかし、そこに恨みや妬みといった感情がない。

それは、ルキウスの知恵深さだけによるものではなかった。


「ユトレーデルには、テオドラとあの試作品を向かわせております。成果はまずお約束できるものでしょう」

と、相変わらず爽やかなルキウス。

とてもこのアラコールには似つかわしくない逸材といえた。

「そうですか?遂に計画が動き出したのですな」

と、機嫌をとる様なシリウス。

「ええ、これで幾つかの資料が取れれば、クルヴァルス計画もグッと実用化が見えて来るはずです」

と、前向きなところも好感と、信頼感があった。

「総督には通したぞ!」

と、やや面白くないアダムノア。

それはそうだ、自分にはあまり教えてもらえないクルヴァルスのことを、外部の者とあんなに話していれば当然だった。

「では、私はここで」

と、去っていくルキウス。

その後ろ姿に、将来の展望を見るシリウスと、その転落を願うアダムノアだった。


案内されたシリウスが、

「ヴァルグラムよ、俺をここに置いてくれんか?今日はその話で来たのだが?」

と、挨拶もそぞろにいった。

「ほほう、またどういう風の吹き回しじゃ?」

理由を聞こうか?とヴァルグラムが。

事の顛末を話し出すシリウス。

「ふーん、ではお主はもうフェルクイエスのハイ・コンシリウスでは無いと申すのじゃな?」

と、目つきが鋭くなるヴァルグラム。

「ああ、だから抜けて来たと言っているでは無いかヴァルグラムよ」

と、言い掛けた所で、

「戯け者!地位を失ったお主に呼ばれる程、予の名は安くはないわ!」

と、腹の底から唸るような響きが、シリウス・マルセルの背筋をズキンと突き抜けた。

そして、

「アダムノア、いつまでそいつをそこに座らせておく気か?」

と、アダムノアに怒鳴りつける。

顔を見合わせる二人。

おどおどとどうすればいいか分からず、身体を揺らすようなアダムノア。

(け、ルキウスがここにおったらワシに同調してくれたものを)

と、毒づくヴァルグラム。

刺す様な視線をアダムノアに向ける。

「ひっ!?」

と、更に縮み上がるアダムノアが、

「マルセル!」

と、引き摺り下ろし、床に座らす。

火を吹いた様とはこの事か?

真っ赤な顔のマルセルが、

「久しぶりの再開なのに、な、何という扱いを?」

と、訝る。

「当たり前じゃ、フェルクイエスの諜者としての価値が無くなったお前に、そこに座る資格は無い」

と、言い放つヴァルグラム。

それは当然と言えた。他にどんな価値がこのマルセルにあるというのだ?

マルセルに興味を失ったヴァルグラムはアダムノアに目で指示をした。

『つまみ出せ!』

と。

肩を落とし途方に暮れるマルセル。

ここに来れば何とかなる、とそう思い込んだ自分が恨めしかった。


それと入れ替わるように、部屋に呼ばれやって来たルキウス。

部屋にはいるなり、

「失礼致します……」

と、何やら話し出すルキウスだった。

そんなマルセルを他所に、

「ふむふむ、成る程。さすがはルキウスよ」

と、ニタリ笑うヴァルグラムの先には、新たなマルセルの使い道があった。

それをもたらすルキウス。

その出自と同じく、その思惑もまた、マルセルの知るところではなかった。


フェルクイエスの成長をかつては支えたマルセル。

今やただの捨て駒へと、その価値を落としていくのであった。


                         完


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