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落ちた紅の花びら 〜A petal named Liselle〜  作者: マメ
3章 幕開け編

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第34-3話〜すくわれる二柱〜


再び宙に飛び上がるクラウディア。

そして、ひらひらとコーラルレッドの線が、揺らめきながら落下した。

ドサっ!

地に落ちる音、その衝突の痛み。

動けぬクラウディアにのしかかるように襲う大男。

だが手は動くクラウディアは、双月を振り上げ刺したのだった。

ひゅぅぅー、と音を鳴らし倒れ行く大男。

そう、クラウディアは左目に貫かれてはいなかったのである。

突き上げる左目の剣の鍔に、その切先を突き当てた。

そして、その勢いで天高く舞ったのであった。

1ミリでもズレていたら、クラウディアは間違いなく”シュラスコ”にされていたことだろう。


休めないクラウディア、跳んでくる脛当てを、またしても転げて躱す。

ドシャン!

と、クラウディアの代わりにへし折られる古木。

その無惨な古木の姿が、人の骨など無惨に打ち砕く事を物語っていた。

惚ける事を許されないクラウディアに、剣が鉄の脛が絶え間なく襲い掛かった。

どんどんと後ろに追いやられるクラウディア。

僅かに白いその衣装が赤味を増していく。

それは、腕を掠め、肩を打ちひしぎ、脇腹を薙ぎ払っていった証だった。

クラウディアもついに息が上がる。

「はあ、はぁ、はあ、何とか二人を引き離さなくては」

呟くクラウディア……

しかし、彼女の辞書に戦意喪失という文字はなかったのだった。

 

何か打開策を思案するクラウディア。

動きが速いのは——こいつだ!

と、左目の方へ駆け出したクラウディア。

背を丸め双剣を逆手に持ち疾走した。

それを捨て身の攻撃と捉えた左目は姿勢を落とし身構えた。

迫るクラウディア、僅かに剣を持ち上げる左目。

あわや激突する、

その寸前で急に方向を変えるクラウディアは、サササと、その傍を駆け抜けた。

それを追う左目、やはり足も速い。

しかし、今はそれが狙いだ。

脛の速さでは追いつくまい。

そう、クラウディアの狙いは分断であった。

クラウディアの背中を捉えた左目が、その剣を振り下ろす。

——誘ったのは彼女の方だった

身体を翻すクラウディアの背をかろうじて切先が捉えた。

構わず回転し飛び上がり、力一杯に左目の脳天を叩き割るのだった。

即死だった。

 

それを見届け、

「うをぉおっ!」

と、雄叫びを上げ飛来する鉄の脛当て。

その足が、目前でさらに伸びた様な錯覚が襲う。

辛うじて双月を交差させる事はできた。

が、その衝撃に備え得る態勢までとは至らなかった。

「ぐふぁ!」

と、木の幹に叩きつけられるクラウディアの背に、強い痛みが走った。

膝から崩れ落ちるクラウディアの足に感覚はない。

彼女の背をえぐり赤く染まる折れた枝の根元。


ガバッと大きな口を開けて突進する脛。

その耳まで広がる口には、引き裂かれた傷がまだ残っていた。

閑寂な林に、血を垂らしながら走り寄る白い顔。

背中から足にかけての感覚が戻らないクラウディアは、


——動けない

今度ばかりは——


戦士として現実を受け止めた。

(あぁ、すくいたかった……)

と、目を閉じていくクラウディア。

「どへぇ!」

と、口から音が出る。

はっ!として目を開けるクラウディア。

その目に映ったのは、顔を砕かれてさっきの古木に突き刺さる脛の姿だった。

そこには、

「ヒーヒヒン!」

と、嘶き足踏みをする、アルジェの姿があった。

そう、クラウディアの危機に駆け付けたアルジェ。

その駿馬が脛の顔に、強烈な後ろ脚をお見舞いしたのだった。

まだ立ち上がれないクラウディア。

しかし、それを許さないアルジェが、その襟を噛んで背に乗せた。

不意に、前に倒れ込むクラウディアが、アルジェの耳元に何か囁いた。

「ブルルっ!」

と、ひとつアルジェが応える。

そして、クラウディアの態勢など、気にしないアルジェは走り出した。

それは自分の意思であるかの様に、クラウディアの身体とその思いを乗せて。

広がる草原へと駆け出したのであった。


——その木には目があった

一部始終を見ていた者がやはり居たのだった。

テオドラ配下の偵察だった。

実害のない様に離れた所から、じっと見ていたのだ。

そして、

「ば、化け物だ」

と、手から遠眼鏡を落とした。

震える手は、掴んだ枝を放せなかった。

「三人のオルクスナイツだぞ?まだ試作段階とは言え……」

と、実験で一人のオルクスナイツが、五頭の猛獣をいとも簡単に仕留めたのを思い出したのだった。

それはあの女と馬が、15頭の猛獣を凌駕する強さだということになる。

「冗談じゃない。そんなのテオドラ様でも——」

そして、その偵察の者がテオドラの元へ、サングィナトーレスに帰る事は無かったと言う。

双月の底知れぬ強さに恐れをなし、地の果てに消え去ったのであろう。

そして、クラウディアに頭を割られた『左目』は、奇しくも追い求めた理想郷の、その守護者に討ち取られることとなったのである。

それは、憧れた者に、この醜い姿から解放されたとも言えよう。

あの日、共にフェルクィエスを目指し、湿った森に迷い込んだ、あの女性との再会を果たせたのだろうか……

そして今、

あの世で共に理想郷を目指していると信じ、

いつの日かそこにたどり着かんと——


                        

                         完


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