デスサイス病の流行
ウィルソン子爵領地へと続く街道を封鎖してからデスサイス病らしい症状の人間が出たという報告はなかった。
上手く水際対策が出来ているのだと私とアスランはウィルソン子爵家の朝食の席で父であるハリー・ウィルソンから話を聞いて安堵の息を吐き出した。
父は私に笑みを見せた。
「マルガリータ、お前とアスラン王子との助言が我が領地の人々を守ってくれた。感謝している」
私は首を振ると真っ直ぐ父と母を見た。
「私はウィルソン子爵家の娘です。だから当たり前のことをしただけです」
そう、もう私は残念ヒロインじゃない。
マルガリータ・ウィルソンなのだ。
アスランも笑みを深めて私の言葉を後押ししてくれた。
「ウィルソン子爵、俺も同じです。例え王族から廃嫡されて王位継承権を失ったと言っても王族の血を引く一人。国民を守るのは当然です」
父はそれに笑みを深めた。しかし、僅かに視線を伏せると言葉を紡いだ。
ある意味、想像できることだったし想定範囲の話だった。
「我が領地は封印に成功したが他の領地では」
私はチラリとアスランを見た。
私もアスランもゲームを知っている。デスサイス病が王都やウィルソン子爵領地のみならずオーレリアン王国全土に広がり多くの死者を出したということを知っているのだ。
アスランがロココの実から大量の薬剤を作っていたのは恐らくその事を見越してなのだろうと私は解っていた。
私は残念ヒロインで悪役令嬢にヒロイン役を取って代わられて断罪されるか和解するか、どの場合でも私に味方する人はいないというストーリーだった。公式ストーリーでは私を思ってくれていたアルフレッド王子や他の攻略対象も全て奪われるという内容だ。
亜久里るりの頃にどうしても手に入れたい心があった。
決して結ばれてはならない血の繋がった兄の心だ。
ただ一人愛した人だ。
「兄さんは亡くなってしまった。私一人を置いて……」
警察の霊安室で泣いて、泣いて、泣き叫んだ。
そして葬儀を行って、私は……死んで転生した。




