本当に愛する人と今回は
オリバー・ノースが捕まり、デスサイス病を振りまいていたマリー・チェストも捕まった。
オリバー・ノースはオーレリアン王国の人間ではなかった。出自はおいおいアルフレッドとリアンナが突き止めていくことになるだろう。
私は聖女として、そして、アスランは第一王子として王都に留まるようにリアンナをはじめ王や他の人々に引き留められた。
でも。
私はアスランと共にウィルソン子爵領地へ戻ることにした。
もう私は私の道を歩きたい。
そう言うとリアンナは解ってくれた。きっと同じ転生者だったから一周目の運命に縛られたくないという気持ちが一緒だったからだ。
デスサイス病の騒ぎが収まった王都は活気にあふれていた。
通りに人が行き交い談笑の声が広がっている。
私は馬車に乗り門へ着いた。
もちろん、アスランも一緒だ。
リアンナはアルフレッドと見送りながら手を振ってくれた。
「また王都へ来て! 待ってるから!」
私も手を振り返した。
「ええ! リアンナもアルフレッド王子とウィルソン子爵領地へ遊びに来てちょうだい!!」
そう呼びかけた。
そして、王都が見えなくなって私はアスランを見た。
ずっと。
ずっと。
胸に溜まっていた。
「アスラン、その……貴方の妹さんの名前……教えてくれる?」
もしかしたら。
もしかしたら。
アスランは私を見て笑むとそっと肩に手を回してくれた。
「それはお前が良く分かっていると思うけどな。俺は最初に気付いた。雨の木の下で真っ直ぐ前を向いて立っていた姿……どんなポジションでも懸命に頑張ってたお前の姿だった」
……俺は実の妹だったお前を愛した。許されない罪だと分かっていても……
「だからお前を頼れなかった。俺の思いを知られるのが怖かったんだ」
私は泣きながら微笑んだ。
「私もずっと怖かったの。だから一番大切なモノは手に入らないと思ってた。でも、手に入ったんだわ。一番大切な……アスラン……貴方が」
……きっと世界を作った誰かが私の願いを叶えてくれた……
「愛してる」
残念ヒロインで良かった。
だからこそ私として筋書きに捕らわれずに手にすることが出来た。
一番大切な人。一番大切な心を。
私とアスランの前には明るい朝の光が差し込んでいた。




