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◯監査院から連絡です。

 優木ハルカと相沢ナルセの事件から数週間。監査係居室には穏やかな時間が流れていた。

「と、言いたいところですが、そうでも無いようです」

 ティオは誰に言うでもなく、一人で話す。いわゆる独り言というものだが、なんでそれが出るのか少しわかった気がする。聞いてほしいけど、聞かせるほど相手に負担をかけたく無いからだ。

 居室のデスクのPCに向かい次の書面監査の準備をしながら、その本当は聞いてほしい人間へ目を流す。これも独り言の延長線上、気づいてほしいけど、気づけ。という意思を出すほどでもない。わかるようになればなるほどわからない。人間というか、心というのはよくわからない。

 改めてこっそり視線を送る。その相手は、シンである。彼女、いや、彼はもうここしばらく女性の姿だ。元のおじさんの姿が若干朧げになってきている。自分は、元プログラムなので、そんなことはないのだが、なんというか、記憶の階層フォルダのずいぶん下の方に、おじさんのシンという画像データがある。そんな感じ。クイックアクセスか、ピン留めを外してしまった感じだ。

 彼女と言ってしまっていいのか、彼と呼ぶべきか、彼の尊厳的には彼なのだろう、多分。彼は、相変わらず黙々と日々の業務をこなしている。まるで漫画からでたような姿、長い銀髪を後ろでくくり、PC用の伊達メガネをかけている、その反射で今は見えないが、その奥には黒の瞳、目の力はおじさんの時と変わらないが、切れ長の目つきがより、その強さを後押しする。着ている服は制服であるはずの詰襟、なのだが、彼のために特注で作られたかのように全てが洗練されている。シン曰く。

「これ、ムッチャ伸びるからいつでもおじさんになっても大丈夫やで」

 とのことだ。そういう問題なのだろうか、といつも思うが、この前の事件の時にのように、男モノのコンバットスーツが水を吸って、ビチャビチャでダボダボで、留めてあった髪がビロビロになるよりは良いのだろうと勝手に納得する事にする。ん?前回は詰襟で突入すればそんな事にはなかったのでは?いや、ダメじゃん。多分そうじゃない。余計な雑念と共にシンを見つめるが、ちっともこちらに気づかないシンから視線を変えようか思案する。

 目に映るシンの姿と、自分の姿を客観視して並べてみる。黒髪、黒瞳、おさげ、非地雷系陰キャ女子大生スタイルの自分と、少女漫画から飛び出して来たような、綺麗なお姫様のようなシン。

 なんだかなぁ、中身おじさんなのに、なんかずるい。

 ぼんやりそう思いつつ視線をずらす、こっちも気づかれないように流し目で。ズラした先には、前の事件の直前に、監査係に加入した空蝉ナツメさん。これで芸名じゃゃないというインパクト。その彼女は、シンとは違う系統のお人形さんのような人。黒髪ロング、前髪は眉毛の辺りで切り揃えてあり、白い肌と対比するような真紅の瞳。華奢ではないスレンダーで小柄な体型。そして最近、彼女はデスクではなく、居室のソファで仕事するようになった。

 そのナツメに目線を向けると、その要因となった人物が否応なく、視界に入る。葛城エリさん。監査係とは違う部署の麻薬取締課(通称麻取)にいる女性捜査官。大柄で鍛えあげているがこの中で一番女性らしい身体つき。ナツメ曰く、若干の苛つきを覚える胸部の持ち主だそうだ。青い髪のロングヘアー。前髪はかきあげた感じ。グレーの瞳とシンとは異なる切れ長の少し威圧感のある目つき。双子のお姉さん、エマが失踪していて、麻取の仕事をしながら、彼女の行方を追っている。そんな女性、あとすごく酒癖が悪い。


 双子の姉のエマさんとの大きな違いはその目つきにあるようだ。エマは真っ青な瞳と優しい目つき。これが大きな特徴だそうだ。秘密のお姉ちゃんファイル、第1ページにその記載がある。

 実は以前、エリのお困りごとを解決しようと思い、試しに署内のプログラムを片っ端から全部洗ってみたが、なんのヒントもなかった。署から研修という形で公安へ行くという制度があるらしい。彼女の人事記録もそうなっていて、そこで途切れている。公安という単語を口にすると皆の目つきが変わるので、多分そこで何かがあったんだろうとは目星がついた。それをエリに報告したら。

「知ってる」

の、一言で終わってしまった。公安については、データのアクセスもログがちゃんと残るので、勝手に黙ってアクセスを試みるというわけにはいかないようだ。組織というものは難しいものだと痛感する。


 話がそれてしまったが、エリはここ最近結構な頻度で監査係にいることが多く、そのことにシンが理由を尋ねたら。

「麻取自体は忙しいのよ、だってこの前の事件は、警察組織の新人のうち1名が薬漬け、もう1人がその主犯だっていうんだから、麻取を挙げていまそっちにかかりきりよ」

 それを聞いてシンが不思議な顔して、お前はええんか?と訊ねると。

「でも、”私の“相手先はそんなことしないから、ちゃんと弁えてるから今は大人しいし、とても協力的。だからいま、私は休暇中なの、消化率ってのもあるでしょ、だからナツメさんと一緒にいるの?なに?なんか悪い?」

 と、畳み掛けるように反論されてしまった。

 エリが暇でここにいる理由にはなりますが、なぜナツメにひっついているのかという説明にはなっていないように感じる。シンさんもシンさんで、いま全然体が元に戻らず苦労はされているようだけれども。とティオは回想する。

「いや、前はな、強く念じれば出来てんよ、それかほんとに不定期で、でも、今は両方ともあかんねん」

 全く原理がわからないシンの変身。仕方がないので、エリの相棒でもあるメディックの豊田サヤカさんにも話を聞きに行ったのだが、彼女は笑顔に若干の困惑を添えた表情で答える。

「あのー、確かに私はメディックですが、おじさんが美少女になる症状については何の知見も持っていません」

 至極真っ当なことを言われて、二人してすごすごと帰ってきたのは記憶に新しい。せっかくなので、女性の立ち居振る舞いを身につけてみては?とサヤカに謎の提案され、それを何故か実践するシン、そしていく日か経ってある程度女性として振る舞いも身につけて、繰り返しになるが本当に、おじさんだった姿が遠い昔のようになっている。

「もともと変身した時は意識しててん、ティオも居てることやし、はしたないのはあかんやろ?」

 とのことだった。自分の状況を鑑みたらそんな悠長なこと言ってる場合なのか、優しいんだか、やはり人の心とはよくわからない。ティオはしっかり仕事から意識を背けてしまったことを確認しつつ、切り替えの意味ですっかり冷めた珈琲を啜る。

 うん、まだ甘みが足りない。しかし甜菜糖はこれ以上溶けない、どうしたものか。


---


 その日の午後、電話が鳴って、ティオが取る。ここ最近は電話番はティオのお仕事だ。ただ、今回も電話口から聞こえる初めての言葉に右往左往する。

「え?監査員?そっちじゃない?監査、院?そうですか、監査院第一曲、え?そっちじゃない?第一、局?、の司法監査課の、」

 監査院という単語に、シンが顔を上げる、エリもナツメもティオを覗きこむ。

 ティオが、係長に変わります。と言って電話を保留にする。

「あー、ついに来たか」

 ティオが声をかける前にシンが電話を代わる。それからしばらく長電話する事になった。

 エリもナツメも顔に面倒と貼り付けてあるような、とても不快感がある顔をしている。

「こんにちはー」

 そこに何も知らない、サヤカが部屋の扉を開けて入ってきた、彼女は背丈がナツメより少し大きいが、顔立ちが幼い感じがする。髪型はミドル、髪と瞳も同じ桃色で、メディックであるピンクと黒の制服といい意味で統一感のある姿だ。おじさんが美少女に変身することへの知見がないとは言ったものの、時折り様子を見にきてくれている。

 サヤカを見つけ、エリが少し悪い顔をして手招きする。サヤカはとっても嫌な顔をしてソファのところに行く。サヤカが近づいてきて、エリは座ったまま耳打ちする。

「監査院よ、監査院」

 その一言でサヤカのげんなり顔がより深刻になる。可愛げのある顔が台無しになってしまった。


---


 監査院、正式名称は会計監査院。主な仕事は国の機関の会計に関する不正などがないか監査すること。癖の悪いところは、ある程度の権限を持っているので、基本的にその監査を拒否することはできないこと。しかも、最近の法改正で、会計以外のことについても監査できるようになった、監査される側としては、非常に鬱陶しい存在である。

 昔はただの一警察署に対して監査など行わなかったが、ここ数年で現場まで降りて監査を行うようになっている。その結果起こる事は、規則に基づき大上段から正論だけを言うその姿勢に現場が辟易し、その現場と監査院を繋ぐ、各署の監査係への文句であったり不信感を誘発する次第となっている。要は各現場の監査係は板挟みになるということだ。その面倒が今回我が身に降りかかると思うと、全く持っていい気分になれないな、と思うナツメであった。

「あー、ごめんねぇ」

 少しねっとりとした喋り方をする壮年のおじさんが部屋に入ってきた。それに続いて、麻取の課長と、医療室長も入ってきた。

 上司の上司のその上司くらいの来訪なので、いまだに電話しているシンと入って来たばかりで立っていたサヤカを除き、全員が席を立つ。こういうのをいわゆるマナーと言うらしい。ティオも遅れることなく立ち上がる。全員が立ち上がったのを確認して、壮年のおじさんは改めて話す。

「あー、ごめんねぇ、少し連絡が遅くなったからけどもぉ、監査院が来るからぁ」

 この壮年のおじさんは署長であり、どうやら、署長にも直接連絡が入ったらしい。ただし口ぶりから察するに、その連絡はもっと早く来てたんじゃないかと、ナツメは感じ取った。

「おそらく、いま係長が受けている電話がそうではないかと」

 ナツメは今の状況を説明する。でも何故、麻取の課長と医療室長がいるんだろう。

「そうだよね、ごめんねぇ。それでさ、使って悪いんだけどさぁあ」

 あ、なんかろくでもない事考えてる感じがするな。

「葛城さんと豊田さんさぁ、監査係への応援って事で、監査院の監査の対応、手伝ってくれるぅ」

 なんだろう、自分に対しての面倒ではなかったので、安心してしまった自分がいる、ただその安心もすぐに裏切られる事になる。

「四条くんと四条さんをさぁ、もうさ、存在自体がさぁ、監査院には説明出来ないからさぁ、二人には外れてもらってねぇ。うん、ごめんねぇ」

 そのナンセンスな署長の指示に思わず、えぇー。と、口から出なかっただけマシである声を心の中に漏らしてしまった。

「課長と室長にもお願いしてあるからぁ、二人は監査当日は署内にいないようにね、ね、ごめんねぇ」

 こっちの都合お構いなしに、中途半端な指示を出す署長。

「はぁ、えぇ」

 と、とりあえず上司の上司のその上司くらいの命令であるから、拒否するわけにもいかず生返事をするナツメに対して、言質を取ったと言わんばかりに、署長が言葉を重ねる。

「うん、悪いんだけどさぁ、それじゃあ、よろしくねぇ」

 そう言って踵を返して歩き扉をくぐったあたりで振り返る。

「あ、そうだ、日程決まったら教えてねぇ」

 うん、ごめんねぇと言い残し署長含め3人は部屋を後にしていった。

「えっと、あの、よ、よろしくね」

 ナツメは顔にげんなりと書いてあるエリとサヤカに改めてお願いをするのだった。


 「あー、そう?でもまぁ署長がいうならしゃーないなぁ」

 シンはそう言ってあっさり引く。ナツメ、ええか?とだけ言って先に受けた電話の詳細と、今後の流れを説明する。

 ナツメも、特段抗議するでもなく、シンからの説明を聞く。呼ばれてはいないけど、ナツメが呼ばれたのでエリもナツメの近くで話を聞く。そうなると、エリがそうするのでサヤカも、さも当然という感覚で輪の中に入って話を聞く。それを見てシンも別に人払いする訳でもなく、説明と引継ぎを行っていく。さらにその最中で、エリもサヤカも平気で意見や質問をする。

 ナツメ、ええか。という発言の意図がよくわからないティオであった。なんなら一人ポツネンの取り残されている感覚に陥る。その日はもう遅かったということもあり、続きはまた後日となって解散した。

 ところが翌日、エリもサヤカもさも当然というように、監査係居室に出勤をしてきた。

 幸い、この部屋のソファはあと二人増えても問題なかった。

 お迎えの準備っていうのがあるんじゃないですか!私がご案内する予定だったのに!なんで!そんなに馴染んでいるんですか!?

 とティオだけは、ズレた熱情を発揮させてプンプンしていた。

 しかし、シン含め監査係関係者4人は全員で、ティオって怒るんだ。という感想しか出ず、それに激昂したティオが、一人虚しく叫ぶだけだった。


 「私は!怒ってなんか!いませーーーーーーん!!!!」


 どうやらこのポンコツ元プログラム、自身の怒りと嫉妬についてはイマイチ理解が足りないようだ。

 

--- 


「いいですか。今回の会計監査院の監査を、監査院監査と言います。」

 仕方ない?ので、改めてティオによる”お役立ち!監査院監査のイロハ“を開講することにした。「先に説明した現場での監査はここ最近の動きであって、基本的な監査はお金の動きについてです、要は私たちがやっている監査を、別の組織がやるということです。」

 知ってる。という顔をするとまたポンコツが怒り出すので、とりあえず皆、神妙な顔で聞くことにする。

「じゃあ何故そんなにピリピリしながら準備するの?」

 間というか、空気を読んでエリが少しわざとらしい質問をする。質問があったということで鼻息荒くティオが解説する。

「この監査において不適切な運用と認定されて、されに不適切事項とされた場合は、なんと翌年の予算が減ったり、事業停止の憂き目に遭うのです」

「でも、私たちの事業停止ってことは治安維持しなくて良いってことにならない?」

ぐぬぬ、とティオが吃る。

「予算がついて事業をする行政なら面倒が増えるけど我々はそうじゃないから、実は双方とも面倒やねんな」

 シンが助け舟を出す。

「通常監査なら物の買い方や管理で変な事してないか、とかそういう話やねんな、それはそれとして、今まで使い勝手良かったのが面倒になるとか、そう言うのはあるわね」

 続きは君が話しなさいと言う意味の目線をティオに向ける。その意を汲んでティオが話す。

「皆さんが基本的に理解されているようなので、先に進めますね」

 声のトーンが先ほどの怒りのトーンから落ち着いている。

「最近の監査の方向性で、お金以外のところも監査される、そしてそれを指摘するにちょうど良い話が、残念ながら我が署にはあったと言う話ですね」

 改めて確認するまでもなく、優木ハルカと相沢ナルセの事件、それが起こる土壌がここにはあるということに監査院が目をつけた。そういうことだ。

「捜査や現場も知らないくせに監査なんて良いご身分なことね」

 エリが言う、ただ別に敵意も諦めもない、それっぽいセリフをただ言っただけという言い方。

国家機関(こっかきかん)行動原理(こうどうげんり)基本的(きほんてき)(ほう)(もと)づいて(おこ)われる(もの)であって、当該担当官(とうがいたんとうかん)恣意的(しいてき)な運用等でその本来定められた法の目的を逸脱(いつだつ)不達成(ふたっせい)、または過剰(かじょう)便益(べんえき)(きょう)するものではない」

 ティオが呪文のような言葉を唱える。最近の監査院の方便である。

「要は法律守って行動せぇ、拡大解釈は良くないよね。っていうことや」

 シンが噛み砕いて説明する。それを受けてティオがまた続きを言う。

当該機関等(とうがいきかん)での不適切行為(ふてきせつこうい)認定(にんてい)されうる場合(ばあい)は、その監督省庁(かんとくしょうちょう)において必要(ひつよう)是正措置(ぜせいぞち)(こう)じること。言い直しますと下部組織の不備は上の組織で責任持って改善して下さいということです。」

 今度はシンに先を越されまいと、噛み砕いた説明まで言い切ったティオ。何故か少しドヤ顔をしている。

「現場を知らないからこそ、正論をいうことができる。それが大事であって監査院の目的だと、言えることが出来そうです。」


---


 お役立ち!監査院監査のイロハの内容について、実は初日の講義で聞いていたナツメは、自分を除く監査係のやりとりを横目で聞きながら、少し安堵していた。監査院監査が来るということはしばらく、現場に出ることはないだろうから。

 先の事件の最後に突然身体が動かなくなった件について、改めてリハビリする時間が出来たという都合の良い理解をすることにする。

 エリには悪いのだが、彼女はやっぱりエマに似ている。それが原因だとは言いたくなし、でも、それ、いわゆるフラッシュバックがあったことは、シンには言っておく必要があると感じている。彼はおそらく、自分がフラッシュバックしたからと言って現場から遠ざけるようなことはしないだろう。確証はないが確信はある。

 ただそれを今ここにいる全員にいう必要はないとも感じている。特に、ティオとエリ。この二人には言う方が良くないと思っている。前者は未知数、後者は原因そのものであるし、おそらく仮に打ち明けられたとて、彼女自身でどうにかできる問題でもない。つまり、それは私の問題ということだ。その方が良いだろう。

 ただ本当に、ただ、という単語しか出てこないが、どうしたものか。正直な話、フラッシュバックというが、明確に何かを思い出したわけでもないし、むしろ何も思い出してはいない。情けない話、あの時口から出た、エマという単語は、彼女に助けを求めたのか、私なんか庇わないで、なのだろうか。それすら自分でもわからない。

 身体の震えもよくわからない、震えというよりもはや痙攣に近いあれはなんだったのだろうか。世間、空想、妄想の世界では、恐怖、トラウマを思い出して身体が反応してしまう症、描写なのだろうが、どうなんだろうか。いわゆるPSTD(心的外傷後ストレス障害)の一種、そうだったらどうする。復帰してる場合じゃないけど…

「あ」

 ふと声が漏れる、エマ失踪について知ってるはずなのに何も覚えてないんだから、立派なそれなんじゃないか。覚えていないことがもはや自然、それくらいズレたところから見ていたことに気付き、変な声を出してしまった。

 その声は、講義に一生懸命なティオ、講義にはうわの空だが、引継ぎでも作っているのだろう別のところに意識があるシン、監査を含めいわゆる会計は初めてで講義を一生懸命に聞いているサヤカの3人には聞かれてなかった。

 エリだけが、ただエリだけが気づいた気配を出すが、何かを言うわけでもなかった。口は悪いが気遣いはできて、肝心なところは気が弱い。変なところで安心する。元バディとは似ても似つかない内面のエリ、やっぱりエリはエリ、エマはエマなんだ。だからこそ。

 聞かれたい独り言ではなくて、聞かれてはいけない独り言。そういうのもある。ナツメはそれを言う。

「あなたの後ろ姿がエマにそっくりだったから、私は動けなくなった。とは言えないよねぇ」

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