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2/20

○エリさん


「へーーー、でも中身がおじさんだから、そんなの誰も気にしないんじゃない」

凛とした声が監察官2人を刺す。ヒールを響かせ、歩いてくる女性、エリだ。

ティオは人型になってから会うのは初めてだが、これが肌感か、エリは寂しさを纏っている。

一瞥、それだけして自分の横を素通りし、最後一歩だけ歩幅が15センチ広い、あ、これが踏み込みか。

大袈裟に振りかぶった右手がシンの顔面を捉えるが、頬に当たったにしては鈍い音、なぜかほっとしている自分がいた。

「考えなおしたんやけど、殴られる理由はあらへんからな今回は。」

右手を顔の前で交差させて、受け止めていた。

「そうね、別に今までずっとなんの積み上げもないんだもの、流石に理不尽ってわけよね」

右手を離し、顔にかかった後ろに流し流しながらいう、そして振り返り、

「誰?この子?またなんか変なことしたの?」

ティオはここぞとばかりに挨拶をする。


「ふーん、訳わかんないのには慣れたけどさ」

と、一瞥、さっきよりは警戒の色は薄い。

「で、いつもべらべらうるさい端末はもうやめたの?」

手ぶらのシンを見てエリは言う。

「あ、あの、私です、」

「あぁ、あなたが持ってるのね、で今日は何の用事?」

そら慣れとは言ってもネェ。とシンは内心ニヤついてしまう。

「だから、あの私がその端末です。正確にはでした、というのでしょうか。」

恐る恐る、しかしはっきりとティオは言う。

「はぁ?」

怪訝、顔ってこんなにも感情を出すのか、カメラの処理のノイズ集合体とは明らかに違う情報の入力。あぁ、たまらない。いけないいけない。ティオも内心ニヤついてしまう。


「そうなんよ、何かいろいろあってワイが面倒みてる」

シンが追い討ちをかける、

「は?」

威圧、顔って(以下略

ティオは意を決して2人の間に入り、ワタワタと説明する。

エリがどんどんげんなりしていくのをシンはニマニマしながら眺めていた。


「はぁぁぁぁぁぁぁ」

吐息、エリは絶望の淵にいた。

「意味わかんない」

年相応の女性の声だ。

「え?何で?何でなの?何これ?」

ペタペタと無邪気にティオを触る。ティオは黙って受け入れている。


ひと通り触り終え、デリカシーのかけらもない質問をして、やっと本題に入る前の状況について整理ができたエリは、げんなりしながら、先を促す。

「ほら、立ち話も何だから、打ち合わせ部屋使いましょう」

椅子と机、ホログラム投影機しかないシンプルな打ち合わせ室に三人が入る。

「そう言えばサヤカちゃんは?」

さっきまで一緒いた癖にしれっと聞くシン。

「そうね、定時は過ぎたし帰ってるハズよ。」

端末を確認して、メッセージをみる、ほら、と画面を見せる。全てがデフォルト配置の画面にサヤカから先に帰る旨ののメッセージ、時間は先ほど別れた時間だ。


「で、良い加減なんの用事か教えなさいよ!焦ったいわねぇ」

慌てないでよ、とシンもいそいそと端末を取り出す。

なんか思ってる展開と違う、ティオは身構える。

「○月x日空いてるか?」

ティオは血の気が引いた、その日はエリさんの誕生日、否が応でもエマのことも意識せざるを得ない日。血の気が引いて言葉が出ない、言葉の意味を身をもって体感する。

「あー、そうね、仕事次第だわ、わかるでしょ」

それ以外は予定ないわ。と軽く流す。あれ?そんなに意識してない?

「ならよかった、それでこれを見てほしいんだが….」

「カフェ・ド・クオモ予約券?、ウッソ、マジ?」

目が泳ぐ、歓喜に震える年相応の女性がそこにはいた。

「ワイは甘いの苦手やから、ティオを連れて行ってやってくれへんか。その日は別件で外せないんやわ」

「「ええええええええええーーー!??!」」


カフェ・ド・クオモ、世界的パティシエ、サルベトゥーレ・アレサンドロ・クオモが手がける、カフェだ、予約が取れないってもんじゃない、今からなら予約は4年待ちだ。


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