○監査のお仕事 取調べなどをします。
「基本的な監査の枠組は大きく言えば二つに別れます。それは会計的な部分と内部統制的な部分です」
ナツメは初日に受けたティオの講義を思い出す。明日から忙しくなるから、と昨日はシンに帰されて、今に至る。自宅から監査係居室まで誰とも会わないので、ティオの講義を思い出しながら復習をしている。
状況としては、刑事部はいま定期監査を受けている。しかもそれが軽微だから、係長一人で行っていたはずだ。そう言ってた。
「定期監査は会計的な部分、お金の動きと物品、もっと大きく言うと資産の確認です」
つまり、やることは伝票とお金の動きの確認と、実際にモノがあるかどうかの確認。繰り返しになるが、だから、係長一人で行ってきた。
「なんらかの不正がある場合はその担当者に深掘りします。ここで、不正といっても単なる間違いも含まれます」
署に入り、少し進んでエレベーターを待つが、もう少し整理したいから階段で行くことにする。
不正。単なる間違いなのに、不正!って監査がいうから、言われた側はポジティブなリアクションなんか出来やしない。だって不正と戦う仕事についているのに、悪気なく単なるミスでもその単語の持つ力に、悪く言えば踊らされる。全く気分が良いものではない。
反対側に来て実感するその面倒くささ。特に今回はその不正と戦う最前線の刑事部での話。ただ、逆に単なるミスについての話なら説明の仕方だけでだいぶ理解が進むんじゃないかという、逆説的な希望を見出すが、多分そうじゃない。どうであっても、定期監査で普通は人が対象になるわけじゃない。
「定期監査ではない部分は特別監査となります。会計的な部分という大きさに対応する言葉で説明すると、内部統制に関する監査、になります。フィクションでよく出る監査室とかはこういう部分を担当してますよね」
監査ものっていうのはある周期で流行ってたりするんですが、しばらくブームは来てないですね。と謎の自虐を添えて説明をするティオ。
それはそうだ、その監査ものは結局、善対悪の構図で端的に描かれるから流行るわけで、いまの我々の状況とは似ても似つかないものだからだ。
いままで自分が犯罪者に対してやってきたように、地道に証拠を積み上げて、それを固めて捕まえる。それを身内にやる、いわば意趣返しに近いものをやるということだろう。それを花形の刑事部にやるというのだ。
「正直に言うなら気が引ける話ね」
ナツメは一人でぼやいてから、自分の悪癖に対して反省する。考えられる最悪を想定して、そこの対応策を考えて一人で勝手にブルーになる。対応できる話ならこの方法は予習をしているだけであり、段取りよくことが進むので、ナツメ自身の性格にはあっていた。しかし今回のように、じゃあどうして良いか分かりづらい時は、仮定の条件設定で悪い方へ、悪い方へを悩んでしまってストレスを感じてしまうわけだ。
特に今回の監査対象、相沢ナルセ。因縁は一つもないが、どうやら優秀らしい。何をどうやって切り崩すのか、そもそも係長のシンはまだ何も教えてはくれない。
困ったな。元来細かいことは気にしない性格だと自負しているが故に、仕事のことになると生真面目に細かく考えてしまう。
「ダメですよ先輩、そんなに悲観してても始まりません。もっと情報を整理してシンプルに考えましょう、なんとかなりますよ」
ふと元バディの言葉を思い出す、エリと同じ声だけど決定的に違う穏やかさ。大体アンタは大らかすぎるって。そう記憶の中にあるエマに言葉を返す。ただ彼女のいう通りだ、ここからだから。切り替えていこう。うん。
監査係居室につく、部屋の明かりはついており、人の気配がする。今日から忙しいらしいし、改めて頑張りますか。
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「簡単な話よ、タレコミで、相沢ナルセは備品をちょろまかしてるっていう話」
朝のルーチンワークが終わり案件が動き出す時間帯。相沢の件、説明するわ。とシンが言い出して、皆が珈琲を淹れて居室のソファに座っている。
ずいぶんな話だ。と思ったが、ちょっと待て。ただの間違いでも不正でくくる監査の話だから、うっかり自分の鞄に入ってたとか、慌てて出てきて手に持ったままだとか、そういうミスも備品の流出や横領だと騒ぐんじゃなかろうか。
「刑事部で不適切な物品の管理があるっていう話が元なんよね」
うーん、ずいぶんとぼんやりしたタレコミだな、と思った。
「ぼんやりやなぁって思ってたけど、ちょうど定期監査やから調べよかってなったわけ」
まぁそうだ。そうじゃないと相沢に話が繋がらない。
「そんでな、無くなった部品と所持者を調べると、制圧用のテーザー銃を相沢ともう一人、優木ハルカが何丁も無くしてる」
あー。と声が漏れる。装備品の紛失は大惨事だ。といっても今の自分には関係ないのだが、訓練学校時代に空薬莢1つ合わないからって野外演習場を文字通り草の根分けて探した記憶が思い出される。
それに優木ハルカだ。昨日道場で相手をした女性。彼女の視線の先に相沢がいた。二人の関係性がここでも出るのね。
「その顔、ナツメも訓練学校で探した人間やな、でもあれ最近やらんねん、時代やなぁ」
そうなんだね。今はやらないんだぁ。いやいや、そうじゃない。いやそうか?
「ってことは、銃はどこいったかわかんないまま?」
ナツメの疑問にシンは頷く。
「刑事部曰くな、相沢と優木で捕物やった際に紛失、現場の捜索をやったけど、ものは見つからず、未使用残弾の数は一致するから、要は外側だけ無くなったっていう話やから他の人が使うってことにはならん」
まぁまぁそのためにテーザー銃を導入したようなもんやしな。と言いつつ納得いかないような顔だ。確かテーザー銃の本体は射出される弾が本体と言っても過言ではない。それが流出してないからセーフ。わからないでもない。でも、なんか腑に落ちない。良いのかそれで?感覚の違いということなのだろうか。
「じゃああれ?よくやるように、紛失は仕方ないが気をつけてね。的な文章とか注意みたいのでで終わりにするの?」
シンが真顔で言う。
「そんなわけあらへんやろ。なぁティオ」
黙って聞いていたティオに話を向ける。手にタブレットを持って作業をしながら黙って話を聞いていたティオが顔をあげる。
「タレコミ元ですよね、実は優木ハルカさんなんですよ」
匿名の通報だっていうことだけど、ティオは元プログラムだもんね、辿れるよね。
「なに?タレコミ元が無くしたコンビの片割れだっていうならバカでもなんかあるって思うじゃん」
いわゆる身内のやらかしにげんなりするナツメ。
「監査って大変ね」
せやろ、と言いつつシンが続ける。
「さっきの説明やと少しだけ誤解があるかもしれんからいうけど、相沢が無くして、次は優木って順番に無くしてる。タレコミの時系列は、相沢、タレコミ、優木。なんよ」
うーん、相沢の目的もわかんない、優木の意図がわからない。
「でもでも、相沢ってもう何件かホシをあげてるんでしょ、しかも強盗未遂とかそういうレベルの凶悪なやつ」
「せやで、強盗未遂とか通り魔とか、ここ数ヶ月で何人もあげてるしかもほぼ現行犯。良いのか悪いのか知らんが、持っている。っていうやつやな」
いわゆる、持っている。いうのは一つの才能ではある、転がって来たチャンスをモノにできるという意味でも。居合わせる、かつ結果を出す。そういうことができるのは優秀な部類なんだろう。
「で、優木さんはどこで無くしたの?」
ナツメの中で残念ながら展開が読めて来た気がしてきた。言葉を聞いたシンの目元が緩む。美少女スタイルのシンにその顔をされると心音が上がる気配がする。
「優木は薬中が暴れてるところに、偶然居合わせたそうだ」
そうだ。のところで少し語気が強くなる。
「もー、絶対何かあるじゃないですか」
せやろ。と言って珈琲を啜るシン。それが合図なのか次はティオが話始める。
「捕まった何人かの素性に一貫性や共通点がなく。署内で共有されているデータ上は、この3件は全て別件で、相沢さんや、優木さん以外の尋問でも特段問題なく、検察官も別々で立件するという話です」
そうだよねぇ、強盗未遂、通り魔、薬物中毒。治安の悪いことオンパレードだ。そんなに多く起こらないが、立て続けに起こる事もないわけじゃない。
「ですから提案なのですが」
ティオがタブレットを置き、座り直す。
「一回犯人たちの話を聞くことはできませんか」
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「てっきり取調室に呼ぶのかと思ったけど、こっちなのね」
ナツメはシンに言う。通された場所は面会室。8畳ほどの部屋で真ん中で背の低いカウンターと、天井まである透明なアクリルで区切られた部屋。アクリルの中央には会話用の小さな穴がいくつか空いている。
シンたちと他の人間は全員半分側にいる。シン、ナツメ、ティオ。そしてなにを聞くんだ、と少し殺気だった刑事部の人間が複数人。中にはもちろん相沢の姿もある。優木は居ない。
「そら、監査やし、事件の取調べをするわけやないからな」
今日はいまだに美少女スタイルのシンは居室での雑談と同じようなトーンで話す。奥の扉から一人目の犯人が警務官に付き添われて入ってくる。1件目の強盗未遂の犯人だ。この彼は末端とされている。
「監査官の四条シンと言います。今回はご協力ありがとうございます」
あくまで監査、犯人や刑事部の同意があって初めて可能だから、シンは少し仰々しくお礼を言う。彼は特段反応を示さない。
「こっちは同じく監査官の空蝉ナツメです」
シンがナツメを紹介する。空蝉という単語を聞いて顔を上げる。やはり物珍しいんだろう。しかし言葉を発するわけじゃない。
「逮捕時や取調べ時に不適切なことがなかったか、という点でお話を聞かせて貰います」
丁寧な語り口であるが、関西弁のイントネーションで喋るシン。ティオの紹介はしないんだ。とナツメはふと思ったが、構わずシンは話を進める。逮捕時に令状の提示があったか、過剰な暴力はなかったか、取調べ時に証言の強要はなかったか。取調べ録画すればこの面談は要らないんじゃなんかとは思うが、逆に取調べを全部録画されるよりはマシか。とやりとりの狭間でナツメは思った。彼は、質問に対して生返事ばかりで面会時間も余ってしまった。
「こちらから聞くことは以上ですが、何かありますか?話したいことなど、言いたい事など」
最後にシンが聞くが、彼はそっけなく、無いです。と言って面会は終了した。
その次に、強盗未遂の主犯と面会した。刑事にこんな非道いことをされた!と大仰に騒ぎ続けたが、事実と異なるか、話を盛っているにすぎない内容だった。自分のことは棚に上げて騒ぐ様は見ていてげんなりする。
薬物中毒の彼は面会謝絶だった。最後は通り魔の彼だ。彼はこちらの話を一切聞かず、美女揃い(一人中身おじさん)の監査係を口説くのに一生懸命だった。なんか必死で面白かった。
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「監査官による面会なんか珍しいなって思ってましたけど、まぁなんていうかこうなりますよね。っていう感じでしたね」
空っぽになった面談室でナツメが話す。
「せやろ、しかも今回はおらんかったけど、弁護士も同席することあるからな」
伸びをしながらシンが答える。
あ、そうか。確かに。と合点するナツメ。その弁護士の性格によるだろうが面倒だという事実だけは変わらないように思える。
「だから普通はやらんやけどな、せっかくティオもおるしな」
ティオを見やるが、彼女はまだ真剣な顔をしてぶつぶつ言っている。それを見てシンはまだかかるな。とボソッと言ってからこちらを見る。
「それにしてもだ。通り魔の彼はイカれてるな。私の中身がおじさんだって気づいたら気絶するんやなかろうか」
ナツメも思わず吹き出す。ナンパと言えばそうなのだが、話が噛み合わないの次元を超えたやりとりだった。後ろの控えていた刑事部の人間の空気も緩むほどだった。
「どこ住み?終わったら時間ある?だってね、ウッチー。さん?」
唐突にあだ名をつけられたことを思い出し笑われる。
「そういう係長だってしーちゃん。だったでしょ」
もう、っという感じで言い返す、だいたい自分のあだ名はウッチーかなっつーになりがちである。椅子に座り思い出し笑いをするシン。彼の真剣な顔真似をする。
「そんでその後よ、ティオ見つけて名前聞いて、こっちもしーちゃんかよ!?俺もしーちゃんになる!ってなんやねんほんま」
ああ言うズレた人間に久しぶりに触れて、自分が復帰したというどちらかと言えば悪い方の実感を感じてしまうナツメだった。
彼の犯行がまだ抜き身の刃物を持って歩いていたところだったので、まだ誰も被害にあってないから、彼とのやりとりに関する空気は緩いものだったが。
アレに一人で対峙した優木の心情に少し同情する。彼の奥に秘められた獰猛なナニカ。彼を拘束する際に彼女がテーザー銃を無くしたっていう意味はわからないでも無い気がする。
「鬼気迫るモノというか、タガが外れているというか、あれを一人で制圧したんだから彼女なりに頑張ったやろな」
そう言って会話に参加してないティオに視線を向けるシン。しかしティオの様子に変化はなくまだ時間がかかりそうなのでとりあえず居室に戻ることにする。
シンがティオの手を引き廊下を歩く、背中を丸め、ぶつぶつぶつぶつ言いながら歩くティオに周りは少し奇異の目を向ける。しかしあんまり構ってられないのでそのまま歩く。
1階のエレベーターホールに着く。エレベーターが来ないのがもどかしい。ティオのぶつぶつは止まるどころか少し加速する。さすがに心配になってきたが、シンはどこ吹く風。あの。と声をかけるが、大丈夫やの一言。
エレベーターが来て乗り込む、流石に乗り合わせる人はいなかった、ドアを閉めて上がるのを待つ。ここでやっとティオがなにを話しているかが少し聞き取れた。
「…………succ!!!………err!!……」
少しゾッとしたが、やはりこの子は、そう言うことなんだ。と実感する。エレベーターが居室のある階に到着しようとしたその時ティオが叫ぶ。
「あーーーーー!!!!!!!もごごおg」
叫んだ瞬間シンがティオの口を押さえて、囁く。
「わかったから言うんじゃない、バレちゃうやろ。」
目を見開き激しく頷くティオ。よし、ありがとうな。と言ってシンはティオを解放する。ティオは大きく息を吐き、エレベーターは到着のベルを鳴らす。
「ありがとうございます、お部屋で話しますね」
少したじろいだナツメに対てそう言ってティオは歩く。少しふらふらしている。
「だ、大丈夫?」
慌てて声をかけるナツメに微笑みながら答えるティオ。
「大丈夫ですよ、慌てて大きな声で報告しちゃうところでした。お部屋で珈琲飲んでからお話しします」
びっくりさせてすいませんと、頭を下げられてしまった。
「うーん、そんなんじゃないだけどなぁ」
と言うのが精一杯だった。
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居室で落ち着くまでにもう一悶着あった。まず、ティオがドアにぶつかる。それでもコーヒーメーカーに突き進んでいく、途中の椅子や机にもガンガン当たる。
ナツメが急いでティオを抱いて止める。
「やっぱ大丈夫じゃないよね?」
ティオの目の焦点が合ってないように見える。
「いいえ、大丈夫です」
ゆっくりとナツメを押し退けようとするがずいぶんと非力だ。本気なのかこちらを傷つけまいとする気遣いなのかわからないが、ナツメを押し退けるほどではない。
「あなた、ちゃんと見えてる?正直に答えて」
心配になり少し強めに言うが、ティオは大丈夫と言うばかり。
「ティオ。ソファに座っててくれた方が、我々の役に立つよ」
後ろからそっと声をかけるシン。焦点が揃わない目でシンを見てからソファを探し、ヨロヨロと歩き、ソファに座る。
「あれよ、なんて言うんか、いまはだいぶプログラム寄りなんよね」
座ったティオを見つめ、シンがナツメに説明する。その一言で合点が言った。数日前のティオとの会話を思い出す。
「最初は苦労しました、どこまでが情報で、どこまでが物体か。紙の厚み、ファイル、机の模様、それすら全部0と1で表現されていたので」
要は今その状態なんだと理解する。
「どうすれば良いの?」
と、シンに尋ねる。彼の答えはシンプルだった。
「珈琲を飲んで待ってれば良い、ティオもそう言ってたやろ?」
それはそうだが少しムスっとしてしまったかもしれない。気づいたシンは優しく言う。
「倒れて怪我しないように抱えてくれたんは助かってるで。大丈夫」
ソファに目を閉じて座るティオを見て、とりあえずそうするしかないのかと思うナツメであった。
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ナツメが珈琲を用意して、ソファにかける。気がついたティオはありがとうございます。とお礼を言い。マグカップに尋常ならざる砂糖を投入する。この光景はまだ慣れない。ただ入れる量はズレてない。見えてる、わかっていると言うことか。
「良さそうやな」
どうやらシンも同じような感覚で、優しくティオに言う。ティオはありがとうございます。と言いつつ珈琲を啜る。
「美味しいですね」
と一言。ティオの顔に生気が戻り、ナツメとシンは安堵する。
「それは良かった、ほな、わかったこと教えてくれるか」
シンもマグカップを持ち、ティオに言う。逆にティオはマグカップを置き、座り直して話す。
「結論から言いますと、最初の彼は初犯ではありません。最近流入してきた外国系マフィアの構成員ですね、以前の逮捕データや、街の監視カメラの映像と比較しましたが、声紋や網膜、骨格の配置が極めて近しいです。残りの人はマフィアやその他の組織構成員じゃありません。いわゆる初犯ですね」
「ティオ、すごいじゃない。こんな短時間でそれをやったの?」
ナツメは驚く。ティオは少し気恥ずかしそうに頷く。
さらっと街の監視カメラって言ったねこの子。何台あると思ってるの?それをあの短時間で?理屈わかんないけど、間違いなく負荷はかかるだろうし、だからそれはあんな感じになるなと。ナツメは改めて感心する。
でも面会室でやらなくても良いのでは?と思ったが、ティオ自身の早く役に立ちたいという気持ちの現れだということにしておく。
「ってことは強盗未遂の真の主犯はその構成員ってことなのかな?」
それはわかりません。とティオ首を振って答える。そうよね、被疑者の関係性は刑事部の案件だからね。
「まぁその刑事部が、今更我々からの情報提供を受けるわけないねんけどな」
ナツメの考えを見透かしたようにシンが言う。
そうなんだよねぇ。もう別々で立件までいっていることを思い出しつつ。自分の中の情報を整理する。
「えーっと、外国系マフィア?今そんなことになってるんですか?」
以前はそんなことなかったはずだ。
「色々な力学っていうのがあるんやわ。最近入り込み出してるんやと聞いている」
シンが答える。おかげで最近少し治安悪いねん。と続けてぼやく。
「聞いているってことは何かの確証があるわけではないんですね」
歯切れの悪い言い方をするシンに対して、意外そうに確認するナツメ。
「なんでも知ってるわけやないからな」
どこから話したら良いものか、という感じで少しおどけて答えるシン。
「どうせ黒龍会の仲違いか、それに挑もうとする新興勢力のどっちかなんやろうな。詳しくは知らん、でもお陰で最近治安は良くあらへん」
とは、感じてる。と、また歯切れの悪い言い方をする。それを見て合点がいく。足を組み直して尋ねる。
「あー、それってあれ?相沢とそのマフィアの関係性がわかんない?それとも、もうわかってる?」
シンの珈琲を飲む手が止まる。ただ、言葉を発したのはティオだった。
「ナツメさんは冊子がいいですね」
ティオ、それは多分察しだと思うわ。




