○エピローグ 酒癖が悪い人
「もーーーーー、にゃんでもっとおおお、早くぅ、言わにゃいのよぉぉぉー、もーーー」
寂れた居酒屋の座敷席で、グデグデになったエリがティオに絡みつく。
ティオは先日あんな目にあったのに、エリに触れられては、まんざらでもない顔をしている。
「ほりゃあー、にょみなさいよぉぉぉー、アッハッハ、ごぼりぇちゃった、ハッハッハァー」
すでにグラスに8割がた注がれたブランデーにエリが乱暴に注ぎ溢れる。
あー、すいません、と言いながらサヤカが机を拭く。エリは相変わらずグデグデでベタベタとティオに絡みつく、若干フェチズムを感じる艶かしい手つき。
「ほりゃあー、にょんでよぉー、ティオちゃーん」
「いつもこんなんなんか?コイツ?」
シンがサヤカ尋ねる。
「ここ最近で一番ですね、麻薬取締課全員潰した時以来ですね。」
「え?そうなの?麻取全滅?あれってコイツなの?え?まさかコイツか麻取で浮いてるのって…」
なんとも言えない顔で頷くサヤカ。
「当たり前よ、潜入捜査で酒に溺れるなんてあってはならないわ、バカじゃないの。」
無駄にキリッっとした顔で言うエリ、しかし、ティオに顔を向けて破顔する。
「だかりゃー、はやくぅ、飲んでえー」
なまじ顔は悪いわけじゃないからあれで迫られて耐性ある人間は最早人間じゃないな。
てか、さっきのムダにキリッしたの何?酔ってないの?何?バカって言った?なんで?
「いや、でも、その」
いつもの非地雷系陰キャスタイルに落ち着いたティオが顔を真っ赤にして答える。
「にゃでも、でもねぇーのーよー、はやくぅ、飲んでえー」
グラスを持って口に注いでいる。
ティオは溢さず器用に飲んでいる。すげぇな。
グラスを空にして、ふう、と一息ついたティオをエリが抱きしめる。
「ごめぇんねぇー、もっとぉー早くねぇー」
この日もう20回は聞いたセリフを吐くエリ。ティオは真面目に返す、コイツはコイツで酔わないのか?
実はエリと飲むのは初めての、ドチャクソ美人スタイルのシンは黙ってビールを飲みながら居酒屋の主人に目配せをする、気前のいい大将は親指をグッと立てている。
実は先日から感じたエマの気配、ソレは写真の女からではなかった、既にその気配はしなかった、だから楽観的にティオを送り出してしまった、それ故に彼女は傷ついてしまった。迂闊だったなぁ。自分で注いだビールの泡が弾けるのを見つめる。
「なにしみったれた顔してるのよ、酒の席よ。もっとホラ、楽しみなさいよ、バカじゃないの」
再び無駄にキリッたした顔で言うエリ。え?なんで?その顔なに?そんなにワイのこと嫌い?あと、バカって言った…
「そうですよ、せっかくだからいい顔してくださいよ」
サヤカがフォローしてくれる。
「うっしゃいわぁー!ボケェエエエ!うちのむしゅめにぃー、にゃにしてくれとッんじゃあああ、このボケコリャァ!!」
唐突に全く似てもないモノマネを披露するエリ。
「むしゅめだったヨォぉお、どうなんよ?、ティオちゃーん」
若干規制が入りそうなくらいの艶かしい手つきでティオの顔に触れるエリ。
「あの、その、えっと、」
エェーなにぃ?とせっつくエリ。
「嬉しかったです!!!信じて良かったです!!!!嬉しいです!」
ああああああああと突然大泣きするティオ。
あ、泣き上戸なんだぁと、サヤカがパッと笑顔になる。え?君そこポイントなんだ。
「愛されてるってええええ、こんな感じなんですねええええええ」
びべえええええええと、泣くティオに爆笑しながらハグするエリ。
看護できる人が増えたのが嬉しいのか、弾けた笑顔のサヤカ。
なんだこれ、まぁいいか、楽しいし。
グラスの泡は全て弾けてしまっていた。
1話 完




