○シンさん
「いっつも人のことボケ扱いしてる報いよね!なんでティオに行かせたの!?バカじゃないの!?」
黒滝会事務所に潜入したエリをふん捕まえて、通信が断絶した旨を伝え、繁華街へ向かう車中で、エリがここぞとばかりに言う。
「手ェ出したやつに言われる筋合いなんかあらせんわ、で、どこじゃ!?ホラ!?早ぉ言えや!ホラぁ!」
ただ焦っているだけの美少女シンが言う。
「アンタが冷静にならないと意味ないじゃない!ほらしっかりして!サヤカはどこよ!?」ここまでこればティオは無傷じゃ済まないわ!」
突き詰めた時の冷静さと言うのはエリが一番なのかもしれへんわ。
「普段のポンコツ具合の反動か!拾うに決まってるわボケェ!」
シンが運転する車はサイレンを鳴らし、赤信号を突っ切り、ハンドルを切る。
「なら良いわ!飛ばして!あの妾のセーフハウスをしらみ潰しに探すわよ!」
三つ目のセーフハウス、一番貧相なマンションだった。団地と言っても過言ではない。
「お前ほんまッ!三つ目やぞ!ほんまにどないなってんねん!ほんまにおるんか!?」
既に確保している黒龍会直系の幹部に怒鳴りちらすシン。幹部だけでなくエリにも言っているようだった。
シンさん、焦らないで。とサヤカが宥める。
あぁ!?と威圧するが、動じない。少し冷静になるシン。
「ここ以外はもうないねんな?どうなんだ?コラ」
激しくうなづく幹部。
「そもそもや、お前な?なんでそないな格好を妾にさせるねん、自分ずいぶんな趣味してるわホンマ」
と、確信に触れる質問をする。妾の姿を見てないぞ、と話を振ったら整形したという話だったのだ。
妾が鬱陶しくなってきた時につい、たまたま自分の好みだと酒の勢いで言ったのがエマの様な容姿だった。
エリは呆れを通り越して、自分にはツキがないのかと思うだけだった。
反対に、そこまでしてティオを死地に送り出すつもりもなかったから、現状一番焦っているのはシンである。
「お前、これで実は別の場所ですってなってみ?どないなるかわかってるよなぁ!命がなんぼあってももう遅いぞ!!?」
間違いない、これ以上は俺もわからんのだ、と呻く幹部を数回殴るシン。
「もう、アンタだけがそんなに慌てると、こっちの調子が狂うじゃない」
既にセーフハウス内に突入したエリの無線が入る。
無線や外からも銃声は聞こえず、静かに制圧しているのだろう。ただ男のうめき声とエリの軽口だけが無線から届く。
一箇所以外を除き掃討完了。
エリからの無線を受け、幹部を突き飛ばしながら、セーフハウスに入るシンとサヤカ。
その時だった、ティオに預けた位置情報が展開される。
ここだ、ここで間違い無い。
三人の足取りは早くなっていく。




