1.理想の未来は
…この帝王学園は、ここに近い地域に住むもの、もしくは優秀と評価されて勧誘されたものだけが集まる場所だ。
俺は、勧誘されてここに来た。
優秀さを決める要素の一つに、ランクというものがある。ランクはSからFの七段階に分かれていて、因子の種類別に決まっている。
そして俺は、猫の因子…ランクBの因子だ。
ランクBというのは全体で見れば高い方ではあるけど、ベスティーナ帝国で最も優秀な学園である帝王学園に勧誘されるようなランクではない。
それでも勧誘された理由は、ランクとクラスを掛け合わせた総合評価にあった。
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…十日前、二月二十二日に遡る。
その日、俺は猫の因子に覚醒し、猫の獣人となった。
覚醒者は、その旨の報告を義務付けられているため、俺は役所に行き、因子の種類とクラスについて報告をした。
「…さて、報告内容の確認が終わりましたので、これから通う学園を決めていきましょう。」
「えっ…?」
俺は獣人に興味がなく、あまり詳しいことは知らなかったので、学園と聞いて戸惑った。
「学園、ですか…?」
俺は、町の小さな学校に通っていたので、必要ないと答えようとした。でも、その前にそのことについて説明された。
「獣の因子に覚醒したものは、必ず獣人専用の学園に通うことが法律で定められているのです。覚醒した日から十日以内にその学園の寮に入り、高等部入学の春までそこで過ごすことになっています。なので、猫宮様の場合でしたら現在通っていらっしゃる学校を卒業することはできませんね。」
「…そう、ですか。」
自分自身が嫌いな獣人になった上に、今の学校の友達とも離れ離れにならざるを得ない。
その事実を知り、俺は絶望した。
「猫宮様は猫の因子、クラスはⅠということで、ランクBのⅠクラスです。これに基づき、猫宮様が通うべき学園を決めましょう。」
今の学校じゃない全く別の学園なんて、どうでも良い。だから、全部役人さんに任せて、決めてもらおうと思った。
「…猫の因子はランクB、それでどうなるんですか?」
最初に提案された学園に行くか、なんて思っていると、役人さんが急に話し始めた。
「ランクBだと、基本的には近くの獣人専用学園に通うのが一般的ですが、猫宮様はクラスⅠということで少々特別な措置が取られます。…猫宮様は、今年設立した帝国最上位の学園、帝王学園への勧誘対象となります。」
俺はその言葉に驚き、興味を持った。
「帝王学園?でも、猫の因子のランクはBなんですよね?最上位なんて、そんな優れたものではないはずです。」
「猫の因子は確かにランクBですが、クラスⅠというのは非常に価値があるものなのです。ランクとクラスを掛け合わせた総合評価で言うと、SSS+…最上位というのに相応しい評価となります。帝王学園においては、特に優秀なものと見なされるはずです。」
「Ⅰクラス、か……隠さなきゃ。」
俺は静かに呟いた。
紋章の評価がどうこうで優秀とか優秀じゃないとかを決められるのが、どうしても理解できない。そんなものを他人に見せることに抵抗がないのか?俺は見せたくない。
因子やクラスしか誇れるものがない、あいつらと同じように見られてしまう。
「…帝王学園は、未来の帝王や高位貴族を育成するための学園で、ランクのみ、クラスのみではなく総合的な実力が重視されます。猫宮様の能力は、他の学園と比べても高く評価されると思いますよ。帝王学園への入学を希望しないのであれば、もちろん他の学園を選ぶこともできますが、猫宮様が優れた資質を持っていることは間違いありません。帝王学園では、十五歳から十八歳までの獣人が集まり、将来のこの国の指導者を目指して切磋琢磨します。ぜひ、その環境で実力を試してみると良いかと。」
「…」
じっくりと考えた。この先の未来を左右する、大切な選択を。
その時、俺は覚醒してから初めてそこに理想の未来を見つけた。
「…帝王学園。帝王を目指す、この国でも最上位の学園か。」
そうして俺は、覚悟を決めた。
いつか俺自身が帝王となり、この国の獣人優位の制度を変えるという覚悟を。
「……帝王学園にします。」
多分、俺はその時、笑っていたと思う。
これからの俺の人生が、良い方に変わる気がしたから。
…役人さんは、そんな俺の目を見てくすっと笑った。「かしこまりました。良い決断だと思いますよ。…では、入学手続きを始めましょう!」
「はい。」
そうして、俺の帝王学園への入学が決定したのだった。
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