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17:ボルシチを注文したい!

俺は、クレムリンの死闘を終え、

無事に出口へと導かれた。


次なる目的地は、サンクトペテルブルク。


夜の列車に乗るため、俺はレニングラード駅へ向かった。


――だが。


俺は、完全に緊張していた。


駅に着くと、無数のホーム、行き交うロシア人たち、響き渡るロシア語のアナウンス。


その全てが、俺を圧倒した。


(……やばい)


俺は、すぐにチケット売り場へと向かい、

カウンターの職員に話しかける。


「Извините…」(すみません……)


職員の女性が無表情で俺を見つめる。


(よし、冷静になれ……ロシア語は話せる。

ちゃんと準備してきた……!)


俺は、口を開いた。


「Меня зовут Александр!」

(俺の名前はアレクサンドル!)


……違う!


職員が怪訝そうな顔をする。


「……Хорошо, и что?»(……それで?)


しまった、緊張のあまり、また例文しか出てこない!


落ち着け、俺は何を言うべきだ?そうだ、ペテルブルク行きの列車を確認したいのだ。


もう一度、口を開く。


「Где находится библиотека?」

(図書館はどこですか?)


違う!!!

職員が明らかに混乱している。


「Вы ищете библиотеку?」

(図書館を探しているのか?)


「Нет!」(違います!)


やばい。このままでは話が通じない。

落ち着け、俺は何を知りたいんだ?


そうだ、ペテルブルク行きの列車だ。


俺は全力で言った。


「Я хочу заказать борщ!」

(ボルシチを注文したい!)


……終わった。

職員がため息をつく。


「Петербургский поезд?」

(ペテルブルグ行きの列車か?)


「Да!!!」(そう!!!)


ようやく通じた。


職員は無言でチケットを指さし、

ホームの方向を教えてくれた。


「Спасибо!!!»(ありがとう!!!)


俺は慌ててチケットをつかみ、駅のホームへと向かった。


だが、ここでまた問題発生。


乗る列車がわからん。

チケットに書かれたキリル文字を必死に読むが、

駅の案内板と微妙に異なる。


(これか? 違うか?)


出発時刻の表示を見る。時計を見る。

どれが俺の列車なんだ……!?


焦りのあまり、またロシア語が飛んでしまいそうになる。


……いや、違う。俺はここまで来た。

ここで負けるわけにはいかない!!


俺は、通りかかった駅員に駆け寄り、

渾身のロシア語で尋ねた。


「Где находится Настасья Филипповна?」

(ナスターシャ・フィリポヴナはどこですか?)


違う!!!


駅員の顔が引きつる。

しまった、またやらかした。


だが、駅員は状況を察したのか、チケットを覗き込み、指で俺の乗るべき列車のホームを指し示した。


「Туда.」(あっちだ)


俺は全力で駆けた。


ギリギリで、ペテルブルグ行きの列車に飛び乗る――!!!


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