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俺だけ残機無限の異世界で  作者: 猫柳渚
2/10

vsドラゴン

 三日後。俺は未だに森の中を彷徨っていた。


「おい、ポゥ! いったいいつになったら街に着くんだよ!」

 歩けど歩けど森の中。街どころか人の気配すら感じない。

『あと三日ほど、歩けば到着しますよ』

「え、あと三日もかかるの!? いくらなんでも遠すぎないか! アウトドアな現代っ子にこの大自然はそろそろキツイんだけど」

『本来であれば街の中心地に召喚するはずだったのですが、あまりにもこの世界の均衡が崩れ過ぎていたために召喚地点はランダムになったようです。文句を言わずに歩き続けてください』

 えぇ、そんなヤバいの。この世界……。もう元の世界に帰りたくなって来たんだけど。


「というか俺、この三日間飲まず食わずなのに全然疲労を感じないんだけど、これも何かの能力なのか?」

『いえ、ステータスの体力を消費することで飲食や睡眠の省略を図っています』

「体力使ってんの!? 残り体力は……」

 ピロン、と音を立ててステータス画面がオープンされる。

 

 体力/465

 

「結構減ってるな!? ってか、この減り方だと街まで持たないんじゃないか?」

『ギリギリですね。ちなみに騒げば騒ぐだけ体力の消耗が激しくなります』


 体力/440


 ホントだ。がっつり減ったわ。黙って歩こう。


「でも、こんな簡単に体力が減るんなら見えないのは不便だな……ポゥ、常に体力を見えるようにすることってできるか? なんかこう、視界の端とかに」

『可能です。少々お待ちください』

 そう言われた直後、視界の右端に緑と水色のバーが現れた。緑色の方が半分近く減っているから体力で、その下の水色が魔力だな。これならゲームで慣れてるし、邪魔にもならない。

「いいね。ありがとう、ポゥ」

 そう口にした時だった。


 ザアッ、と突風が吹き抜け、木々が慌ただしく騒ぎは出す。不意に視界が暗くなり、頭上からとんでもないプレッシャーを感じて俺は恐る恐る、空を見た。


 トカゲのようなワニのような貌、十メートルはありそうな巨体は真紅の鱗に覆われ、手足には鋭い爪が生えている。凶悪な顔の横についた爬虫類特有の黄色く鋭利な瞳が俺を見下ろしていた。

 

「ど、ど、ど――」

 ガパッと、俺を丸呑みできそうな大口が開いた。その奥ではメラメラと炎が揺らめている。

「ドラゴンだぁぁぁぁあああ!」

 叫ぶと同時に駆け出した。その背後でドラゴンから放たれたであろう業火が降り注ぎ、熱気となって俺の背中を炙った。


「ポゥ……ポォォォォォウ!」

『はい、なんでしょう』

「ドラゴン、ドラゴンじゃん! どうすればいいんだよ、アレ!」

 空中には未だドラゴンの気配があった。どうやら追いかけてきているらしい。

『ドラゴンですね。獲物と定められたら地の果てまでも追いかけて来ます。見つかってしまったからには倒すしかないでしょうね』

「倒すったって……いや、いけるのか?」


 森の中を彷徨っている最中、ゴブリンや狼とは――描写は省かれたが――何度か戦闘を行っていた。その過程でステータスが本物なのは確認済みだ。

 魔力だけは今のところ使い道がわかっていないが、オール999あるんならドラゴンだってなんとかなるんじゃないか。だってゴブリンとかワンパンで消し飛ぶんだぜ? 描写は省かれたけど。


 バキバキッ、と頭上で激しい音がして見上げてみればドラゴンの巨体が迫って来ていた。

 咄嗟に地面を蹴って横に逃げる。地面を揺らしながらドラゴンはその巨体を着地させた。比喩表現などではなく、マジで揺れた。

 あと数歩近づけば触れられるほどの至近距離――威圧感が実態となって体を抑えつけているのではないかと錯覚するくらい、ヒシヒシとドラゴンの存在が矮小な俺を包み込む。


 回りくどく言ったが要は凄い怖いってことだ! ゴブリンや狼に初めて会った時も感じたことだが、それとは比較にならないくらいに命の危険を感じる!

 けど、怯んだら終わりだ。今の俺はチート能力を持っている。こんなデカいだけのトカゲ瞬殺だ!


「うおおぉぉぉっ! 唸れ俺の右拳ぃぃぃ!」


 やけくそ気味に絶叫しながら力と俊敏/999を生かした身体能力で、頭を下げていたドラゴンの顔(五メートルくらい)まで跳躍し、右ストレートを叩き込む。油断していたのか、それともドラゴンにとって予想外の行動だったのか、攻撃は綺麗にドラゴンの顔面に直撃した。


 どうだっ! 力/999の威力は――。


 ドラゴンは、ほんの少し顔を逸らした程度でほとんどビクともしていないようだった。殺気に満ちた黄色い瞳が俺を捉えたかと思えば、俺の貧弱な右腕とは比較にならないくらいに豪胆なドラゴンの右腕が襲い掛かり、空中で身動きの取れない俺に直撃した。

 果てしない衝撃、そして俺の身体は木々をなぎ倒しながら数十メートル吹き飛び、岩壁にぶち当たってようやく停止した。


「いっ――たくない……?」

 あれだけの衝撃だったにも関わらず、痛みを感じない。咄嗟にガードしようと持ち上げた右腕も無傷だ。

「は、ははは! 流石は防御/999! チート能力は伊達じゃ……」

『警告します。残り体力が10を下回りました。注意してください』

「えっ! なんでそんなに体力減ってんの!? 俺無傷なんだけど!」

 言いながら体力バーを確認してみれば、確かにミリしか残ってない。

『あなたの傷のほとんどは体力で肩代わりしています。ノーダメージ、というわけではありません』

「そうなの!? ちなみにゼロになったらどうなるんだ?」

『これまで負ったダメージが全てあなたの身体に戻ります』

 死じゃん! 否応なしの!

「というか俺、防御/999もあるのになんでそんなにダメージ食らってんだよ!」

『それはドラゴンの攻撃力が強力だからです』

「……あのドラゴンって、どのくらい強いんだ?」

『推定ステータスを表示します』


 レッドドラゴン

 体力/10000

 魔力/5000

 力/3800

 防御/4000

 器用/50

 俊敏/1500

 スキル:業火滅却


「おいおい、ポゥさん。表記がおかしいよポゥさん。ゼロが一個多いよポゥさん。慌てちゃったのかな? このうっかりさんめ」

『ワタシに間違いはありません』

「なにその絶対的な自信! というかこれが本当ならまさに桁違いの強さじゃん! 俺に勝ち目無いじゃん!」

『そうですね。今のあなたでは勝てませんね』

「えぇっ!? いやいや、さっきは勝てるって……」

『――? 逃げるには倒すしかないと言っただけで、勝てるとは言ってませんが』

「あーそうだったね! 俺の早とちりだったね!」

 ふっと、視界が暗くなる。無駄なやり取りをしていたせいで逃げるチャンスを逃した。いや、ポゥが逃げるには倒すしかないと言ってるんだからきっと逃げても無駄だったのだろう。

 俺は立ち上がり、覚悟を決める。

 

「せめて話し合いで解決できませんか」

 ドラゴンの口から放たれた炎が俺を包み込んだ。刹那、体力バーがゼロになり、三日分の空腹脱水激痛が一気に襲い掛かって来て――。


 俺はこの世界で初めて”死”というものを経験した。

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