2024年1月10日 語り゜
今日の投稿は、すでに投稿済みの『廃校の跡-あるひとコマ』を改稿したものです。
『廃校の後』
少年は雨が屋根を叩く音の中、校舎の3階の廊下を走る。本来ならば教室から出てくる誰かとか、校則に従って教師は、少年を止め叱るなり怒るなりするだろう。しかし、少年は妨害もされず一直線に校舎の端から端へと駆け抜ける。
「相変わらず早いったら」
少年の走りを少女は足を窓から外へと投げ出しながら見ている。何度も往復して走り続ける少年が止まるまで少女は見ていた。
雨が小降りになった中、懐中電灯で足元を照らしながら、少年は帰途につく。
「よく飽きねぇよな」
誰に向けた言葉か、少年は苦笑交じりにつぶやく。
「明日もまた走るんでしょ?」
少女は真っ暗な教室から外を眺めて笑う。
「走らないの?」
答えは返らない。
翌日、西に傾き始めた太陽と青空の下、誰もいない校庭を少年は走っていた。
「今日は外で走るんだ」
走る少年を3階の教室から少女は見下ろしていた。
「なあヒロ、まだ江小で走ってんだろ?気を付けろよ、あそこ、いつ壊れてもおかしくないくらいにボロいんだからさ。お前んちから近いから練習しやすいんだろうけど、何かあっても助けに行くには俺らじゃ遠いんだからさ。」
「わかってるよ。ありがとう。」
「ってか、お前も寮に入っちまえばいいのに~。」
「俺は寮に入れるほど、早く走れないって。」
少年たちの和気あいあいとした会話は続く。
2012/04/10作・投稿
2024/01/10改稿