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ゆめうつつをつづる  作者: 稲波 緑風
2026年1月1日
806/830

2026年1月6日 語り

友人といろいろとやろうと約束した作品の書き出しです。(ここまでしか書けなかった)

現状、約束を破っているのは、私のほうですので。

 『命の契約』


「兄さん、ごめん。手伝ってほしい。」

小さな公園の裁判所から一番遠いベンチで待っていた弟が泣きそうな顔をしていった。

「良いだろう。何からはじめる?」

手伝う内容を聞かずに答えると、少し驚いて少し笑った。

「りんご園の秋。」

弟がこぼした一言に頷いて仕事に戻った。


『りんご園の秋』

【統一教会に色彩の簒奪者あくまとして10年前に処刑されたサティニス・ボラファスが、有名になった作品。この作品はサティニス・ボラファスの初期~後期の作風からがらりと変わり、写実的なものになっている。また、この作品から油彩画ではなく、鉛筆・色鉛筆・クレヨン・水彩画へと変わる。未だに別人の作品ではないかと疑う者がいるが、本人と家族の証言があり、作品帳(サティニスが作品を描き終わるごとに模写してまとめていたスケッチブック。家族もその存在を死後に知る。)にしっかりと書かれているので、別人の可能性は少ない--。】


 ポリスノトスにある古城を改装した美術館に、不釣り合いな真っ白な壁が四方を囲む小さな部屋。その入り口が一つだけの部屋にひとつだけ掛けられている絵。

 部屋に入ると、薄く塗られた絵の具がなぜか存在を強く主張していて、逆に世界が薄くなったようになる。その絵は青々と葉が繁り、花弁が散り、幹も草も色が無い。しかし、無いはずの色をその絵を見た者は認識する。そして、絵を見た者はどこか空ろな目で数分から数日、日常を過ごすのだ。本来なら廃棄されてもおかしくないが、酔狂な者はどこにでもいる。だが、酔狂な者は待っているのかもしれない。色彩の簒奪者が処刑の前に言った言葉が叶う日を。


それが叶う日が来る。


夕方、誰も居なかったはずの部屋に色が()()()

『りんご園の秋』には赤々としたりんごが実り、濃くなった色は存在を強く主張するのをやめていた。散っていた花弁は咲き誇る草花に代わり、幹は風雨にまみれた年月を示していた。そして、白い紙が額縁に針で止められている。その紙には『りんご園の実り~春~』と書かれていた。



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