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2023年12月27日 詩
『満月と』
一面白銀の世界
人工的な明かりはなくとも
足元を怖れぬくらいには明るい
ゆらりゆらりと
揺れる影は
淡く青く儚く
酔いのまわった身体を
のんびりと進ませながら
時折空を見上げて声をかける
「寒いですねぇ」
人通りのあるところは
薄汚れ泥にまみれて
アスファルトが
ちらりちらりと輝く
砕かれて入っている小石の
ささやかなる主張だろうか
街灯では見ることの出来ない
限られた時だけのお楽しみ
時折笑みを浮かべて声を出す
「寒いですねぇ」
眠りの中に世界が落ちたころ
冷たい空気が転がって
小さな団子を作っては崩していて
誰も見ていないから
誰も知らないまま
お遊びが続いて
ゆっくりゆっくり過ぎていく
しんしんと空気は冷えていって
そっとどこかで声がする
「ああ寒そうだなぁ」