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2023年12月24日 詩
『ほほえみの』
夕暮れにのぼる影を見る
どこへ行くのか
夜の始まりに届く笑い声を聞く
楽しい思い出
星空に月光の広がりを知る
光も凍る道
暗がりに扉を開ける
ぬくもりの洪水が襲う
ともしびに包まれる景色
二色に染められた小包
切り裂かれる紙の音
白い封筒に黒い文字
「元気ですか?」の一文
帰れないと伝えたあの時の声
日常に埋もれたわがまま
いたわれない身体と思い
渡せない相手への優しさ
返せない己の愚かさ
時計の針は長針と短針が近付いている
「ありがとう」の一言だけでも
電話では見えない表情
精一杯の見栄を張る
フッとゆるむ空気
思い出す貴方のほほえみ
そのほほえみの豊かさ