2025年7月29日 どく(独白)
一瞬のこと。意識が切り替わる。
目線の先に、何かがあるわけではない。日常の、変化のない、いつもと同じ、部屋があるだけだ。
だがそこに、空を見る、岩を見る、草原を見る、星を見る、町を見る、死を見る。
自分の、服も、体型も、色彩も、声色も、性別も、性格も、能力も、年齢も、いつもの私ではなくなる。
目を閉じる、深呼吸をする、手をあげる、足を出す、声をあげる、きっかけはない。
一瞬。自分の中で切り替える。
それだけで日常から逃げ出して、妄想の世界に入っていく。
誰かに見せるものでもないし、誰かに聞かせるものでもない。
演じているつもりはない。台本があるわけではないから。
ひたすらご都合主義になる世界で息をする。
始まりも終わりも中途半端だけれども、私が私でありながら、私が私ではなくなれる。
そんな妄想の世界にて、過ごしている時間が苦しくなる。
妄想の世界で息をしている。その自覚の隣で、現実から逃げていることを突き付けられている。
妄想をやめる必要はないのだろうけれども、居続けることは麻薬に似る。
やめなければいけない。それが出来ない。それは弱さだ。
私が私のまま私を演じられるなら、その時になって私は私を認められるのかもしれない。




