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ゆめうつつをつづる  作者: 稲波 緑風
2025年7月
627/725

2025年7月7日 +どく +詩

 今日は七夕。七十二候で、温風至あつかぜいたる



 『殺人未満の独白 「人生の終わりまで価値が等しい相手はいなかった 愛した人の価値は自分よりも重かったから」』


 人を殺したいと思ったことがある

 殺してしまえば何もかも

 何もかも終わると考えていた

 焼くのか 刺すのか 絞めるのか

 殺す方法さえ考えた


 ある時殺した後のことを考えた

 焼けば家が無くなる

 それは自分が生き残ったときに困る

 刺すのは一人が限界

 血の後始末が面倒になる

 絞めるのは力が足りない

 道具を使うには運ばなくちゃいけない


 そんなことを考えて思った

 人を殺すってなんて面倒なんだろう

 と

 後片付けやら証拠隠滅するやら

 労力と時間とお金が必要だ

 それらをかけてまで殺す必要があるだろうか


 だって人間はどうせ死ぬのだ

 放っておいてもどうせ死ぬのだ

 嫌いならかかわらなければ良いのだ

 どうしてもかかわらなければならないなら

 腹の内で見下していればいいのだ

 「いつでも死んでくれていいんだぞ」って


 そんなことを考える日々である日

 殺したいと思う相手をどう殺すか悩むのは

 嫌いな相手に自分の時間を取られているに等しい

 そう気付いた

 バカバカしいほどにすがすがしい気分になった

 そうか

 殺したいと思う相手に自分の人生の時間を

 一秒でも()くくらいなら

 何も思わず考えずのほうが

 どれほど自分の為になるだろう

 そう気付いた


 どうあっても人間は死ぬのだ

 寿命からは逃れられないのだ

 ならば

 殺したいと思う相手に

 自分の時間と人生とを割く価値があるのか

 それだけ自分に問えば良い


 ああ

 誰かのせいにして 誰かの人生を奪って

 それでも自分の人生が良いものだと思えるのなら

 殺人すら犯しても良いかもしれない

 だが

 殺人を犯せば 法で裁かれ 社会的に死ぬのに

 なぜ自分の人生を賭けなければならないのか

 相手にそんな価値があるのか

 自分の人生に等しい価値が相手にあるのか


 心の内を明かさなければ

 何を思おうと自由である

 ならば他人のことをどうはかろうと

 明かされなければ問題はないのだ

 だから

 殺人なんて行為をしない

 なにせ自分の人生を賭けるに等しい

 価値ある他人を未だ見つけられてはいないのだから

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