2024年11月18日 語り゜
『夜道と心炎』
私は夜道を歩いた。目的もなく、目標もなく、歩いた。
心が怯えていた。夜の闇に、街灯がつくる影に、怯えていた。
色彩の欠ける夜道を、人が寝静まっている時間に、ただ一人で歩いた。
何があるのか、何が出るのか、後ろも前も暗いから怯えていた。
それでも歩くこと以外に私は自らの荒れ狂う心を静める方法を知らなかった。嵐でもなく、凪でもない心を、何をして何をしたくて何を求めているのかがまったくわからないこの心を、私は持て余していた。
口に乗せて人に話せば楽になるだろうか。・・・・この口は嘘も誇張も構わず言うのに。
言葉を紡ぎ出せばいいのか。・・・・もうそれほど多くの言葉をもってはいないのに。
我が身がかわいい。・・・そうでなければ、生き続けてなどいやしない。
我が一番である。・・・そんな驕りは粉々にされたはずだろうに。
道はどこにつながり、どこまで行くのだろう。
一歩一歩は怯えているのに、歩みすべては平素と変わりない。
くだらない偽りを演じ続けることが苦しいのならば、舞台からおりてしまえばいいものを。
求めても手にすることなどできないと知っていて。見ているものが虚像だと知っていながら。舞台から降りることがこんなにも苦しい。
だが、いずれの舞台にも終幕は訪れる。そう、その時は近い・・・。
ここはどこだろうと見覚えのあるものを探す。見つかる時は頭の地図に訂正として加え、見つからないときは、新たに地図を書きあげる。
心に炎が起こる時、その炎は身を焼く。それはそれは苦しく辛い。
どんなに水を注ごうとも、炎が自ら消えることを認めるまで消えることはない。
どんなに執念深いのだろう。・・・私は。
今日の題名に「語り」とつけたが、もしかしたら「詩」かもしれない。
昔に書いたものなのだが、すでに私の記憶にこの時のものがない。
なので、供養である。
もしかしたら、今年中にこんな供養が増えると思うので、「゜」がついていたら、読み飛ばしていただいてもかまいません。




