2024年9月14日 語り
『こんばんは、かわいい人形さん』
カタ コト カタ コト
耳を澄ませてようやく聴こえてくる音が、だんだんと近付いて来ているのは、気のせいではないのだろう。
だが、どこから何が来ているのだろうか? 1DKの部屋で独り、夕飯を食べながら気が付いた音に疑問を抱く。
カタ コト カタ コト
玄関のほうではなさそうだ。ベランダなんてないこの部屋では、外からも難しいはず。3階なのだから。
いや、そもそもこの音は何なのだろう?
足音だとしたら、床がきしむ音ではないのは変だし、そもそも人間なら玄関から来るはずだ。
まてまて、人間ならとはどういうことだろう?
人間でないとしたら、人間でないものがあの音を出しているとするならば、そもそもここに向かっているのかすら、確かではないのではなかろうか。
カタ コト カタ コト
音が大きくなってきた。静かにしていれば、しっかりと耳に届く音量だ。この部屋に近付いて来ているから、であっているだろうか?
玄関から外を覗いてみようか? いやいや、こういう時は、気付かないふり、知らないふり、見えていないふりが良いと聞いたことがある。動かないでいよう。
カタ コト カタ コト
止まった。
音が止まった。
どこで止まったのだろう?
いやいや、気にしてはいけない、気にしてはいけない。
ゆっくりとスマホの音量を上げて、動画を再生させた・・・・・・。