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2024年8月10日 詩
『願わくば誰もいない所にてただひたすらにあらん事を己が目標にしたくて』
歌いたい歌がある
心の奥底から
湧き上がってくる
言葉と音楽にのせられた
その一瞬だけしか成らない
私しか聞かない歌を
誰もいないところで
風に言葉が散り散りになって
何も残らない歌を
たとえばその歌が
応援歌だったとしても
たとえばその歌が
反戦歌だったとしても
たとえばその歌が
罪の歌だったとしても
たとえばその歌が
上手かったとしても
たとえばその歌が
歌いたい歌がある
心の奥底から
吹き出す
どうしようもない
言葉と音楽に包まれた
紙にも機械にも残らない
私だけが聞こえる歌を
たった一人で
音の漏れない場所で
蒸発してしまう歌を
たとえばその歌が
悲しい歌だったとしても
たとえばその歌が
楽しい歌だったとしても
たとえばその歌が
愛の歌だったとしても
たとえばその歌が
恋の歌だったとしても
たとえばその歌が
歌いたい歌がある
誰かが歌った歌ではなくて
楽譜にも残っていない歌を
機械から聞くことのない歌を
心のままに流れる歌を
歌いたい




