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2024年3月1日 詩
『糸でんわ』
片耳付けて聞こえてくる音を知る
ささやきはざわめきに
大声は風に
伸ばされた糸は
ピンッと張られ
シュンとしぼんで
ダランと垂れて
どこからか届く音を運んでいる
誰が聞いているかわからない
糸がついた紙コップに口を当てて声を入れる
はじめまして
おはよう
こんにちは
こんばんは
おやすみ
また明日
さようなら
挨拶しか言えない
片耳付けて聞こえてくる音を知る
朝に昼に夕に夜に
人に鳥に獣に
声の相手はわからないけれど
聞こえてくる音は
糸でんわの先
誰かからの密やかな通信