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第四章「赤緑の塔」その5

 声の正体は、予想通りニョグタだった。あの業火の中をどうやって凌いだのかわからないが、かなりダメージはあったらしい。目の前のそいつは、先程までの光沢も弾力もなく、真っ黒焦げのひしゃげた肉の塊の様だった。


「よぐも……アタシの苦労を台無しにしてぐれだじゃない!……次に会った時は、必ず握り潰してや……」


グシャァア!


 目にも止まらぬ速さで、エドナがニョグタに踏み込み、その鋭い爪でボロボロの黒い塊を引き裂く。


「今、お前が潰れなさい」


 飛び散った肉片と引き裂かれた塊が、黒い大地に溶けていく。


「ふふふっ、今のでアンタも標的決定よ……またお会いしましょう。あはははははは!」


 不快な笑いと共にニョグタは消え去った。顕現直近の邪神を盾に生き延びたのだろうか……なんて奴だ。次会った時云々は俺のセリフだ。


 再び、静寂と冷たい風か訪れる。


「エドナはこれからどうするんだ?」


「さっき飛んでいる時に、遠くにレプティリアンの生存者達を見つけました。一先ず合流します。でも暫く群れからは離れようと思っています。行きたいところもできたので……」


「そうか……」


 オルトロのことについて、俺は何と言えばいいか分からなかったが、先に彼女が口を開いた。


「オルトロは居ましたよ。間違いなく。この私の心の痛みが、それを証明してくれている」


 そう言ったエドナの表情は悲しげだったが、目は真っ直ぐと前を見据えていた。


「あぁ、その通りだな」


 エドナは俺に深々とお辞儀をする。


「今回は本当に助かりました。貴方がいなければ私は死んでいました」


「いや、お互い様さ。お互い無事で良かった」


「しかし、奴はまだ死んでしません。またやつが現れたら、その時は……」


「いつでも呼んでくれ!当たり前じゃないか」


 俺はエドナの笑顔を初めて見た様な気がする。


 彼女はもう一度、お辞儀をすると、生存者達のところで飛び去っていった。



数日後……



 日本に帰って数日経つが、アイムの代償が何だったのか未だにわからない。直ぐにわからないということは、無くても生活に不自由しないものなのだろうが、逆に不安になる。


「さぁ早速、兄さんからどうぞ!」


 俺と、ニーアと香織、ついでに加賀美は、カラオケに来ていた。先日、香織が余計なことを言うからニーアが俺の歌を聞きたがったのだ。


 まぁ、来てしまったものは仕方がない。俺の美声を披露するしかあるまい!イントロが終わり、息を吸い込む……


 暗い部屋の中には、バックミュージックの重低音だけが響いていた。


 はぁ……


 俺は心の中でため息を吐く。


「護?どうしたの?」


「すまない。ちょっと喉の調子が悪いみたいだ。気にせず歌っててくれ」


 マイクを香織に渡して、部屋の外に出る。


「惜しかったのう……妾も聞きたかったぞ」


「絶対に歌わなければならない場面なんて、恐らくもう俺には無いさ。実質、代償無しってところだな」


「本当にそうかぁ?」


 珍しくアスタロトが心配そうにこちらを見る。相変わらず人の心中を見通す奴だ。


「兄さん!」


 気づくとニーアも部屋から出てきていた。


「兄さん……もしかして、歌を……」


 俺はなんでもない様に微笑んだ。


「良いんだ。それよりニーアの歌を聞かせてくれよ」


 部屋に戻ろうと振り返ると、後ろから来ていた女性の店員さんにぶつかってしまった。


 気づいた時には手遅れで、運んでいたジュースやらポテトやらが宙を舞う。


 なんとか1つでもでも受け止めようとてを伸ばしたが、それらが俺の手に触れることは無かった。何故ならば、定員さんが全て華麗な身のこなしと素早い動きで、全て元の盆に受け止めてしまったからだ。


「誰かと思えば、召喚士様じゃないですか。もう少し、体術を鍛えた方がいいんじゃない?」


 聞き覚えのある声にはっと顔を見る。琥珀色の髪を緩く2つにおさげにした、小麦色の肌の初めて会う女性が立っていた。しかし、その大きな青い瞳には見覚えがあった。


「もしかして、エドナか?行きたいところって日本だったのか!」


「オルトロが最後に一緒に住もうと言ってくれた場所だったので……。それに、貴方もアイツに狙われてます。一緒にいた方がすぐに会えると思って」


「それにしても、こんなところで一体何を」


「見てわからない?カラオケのアルバイトよ。ここには、私の友人も働いてるの。日本には結構多いのですよ?もしかしたら貴方の友人もレプティリアンかもね?」


 エドナは、はにかみながら業務に戻っていった。


「兄さん?レプティリアンって?」


「あぁ、レプティリアンってのは……」


 トカゲ人間が人間社会に紛れ込んでいる。そう聞かされた時には、少し不気味さを感じたが、あの邪神を封印しようとしていたもの達や、オルトロやエドナを見ると。そんな考えは消し飛んだ。


 例え、友人が人間だろうがレプティリアンだろうが、悪魔だろうが関係ない。大事なのは、そいつが何であるかではなく、どんな奴か。そんな言葉を俺は思い出した。


第四章「赤緑の塔」完

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