勇者に恋する悪役令嬢になりたいからトラックに轢かれよう!
信号の色が、赤から青に変わった。
ブゥゥゥン……
「よっしゃ!!!!!かもんトラック!!!!!うおおおおお!!!!!」
勇者に恋する悪役令嬢になりたい私は、勢いよく車道に飛び出した。次の瞬間、目の前が真っ暗になって意識を失った。そして目が覚めると。
「お嬢様、おはようございます」
執事が起こしてくれた。鏡に駆け寄って、自分の顔を見る。
私は勇者に恋する悪役令嬢になれていた!喜びに満ち溢れた私が館の外に出ると、勇者一行が凱旋パレードをしている。賑やかな街。良いところだ。
「勇者様ー!」「きゃー!」「勇者様ー!」
人々が騒いでいる。勇者が堂々と道の中央を歩いているからだ。すごい!
「勇者様ー!私のこと覚えてますかー!!!」
私は大きな声で叫んだ。勇者はちらりとこちらを見ると、にこりと微笑んだ。
良かった。私、あの人のことが好きなんだ……!
次の瞬間、どこからともなく飛んで来た矢が私の胸を貫く。どこから飛んで来たんだろうほんと。
ハッとした表情の勇者がこちらに駆け寄ってくる。そして。
「大丈夫ですか!」
私を抱きかかえてくれた。イケメンだ。嬉しいな。もう思い残すことはない。私は抱きかかえてくれている勇者の手をぎゅっと握ってすごいいい笑顔を浮かべた。
「勇者様に会えてよかったです……」
そして私は、命を落とした。
出オチからの失速で0km/hになる前に終われたと思ってるよ!トラックだけにね!ハッハッハッハッハ!!!!!