プロローグ―そして少女と青年は出会った―
銀河の果て。その果て果ての果て。銀河を抜けるとそこは宇宙鯨の口が広がって、広がって―――。
年に一度しか開かない鯨の口の向こう側にはこことは違う世界が待っていた。
*☆*☆*☆*☆*☆*☆*
宇宙鯨の口の中からアレが飛び出してきたのはほんの1時間前だった。
外の世界の、しかも地球の人々が生み出したナニカ。
でも確かにアレには人が乗ってる。そう僕は確信した。
気づいた時には走り出していた。
光星にぶつかり光に包まれたアレを追いかけて。
いや、まぁ飛べばいいんだろうけど。
その時はただ走りたかった。
中の住人と会うのは2000年ぶりだったんだから―――。
*☆*☆*☆*☆*☆*☆*
目が覚めた時、私は天国にいると思ったんだ。(もしくは地獄かもしれないけど)
だって北斗がいる。死んだはずのあの子が目の前にいるなんて、それはもう天国しかありえない。
母さんに似た優しげな瞳と口元にあるホクロは父さんとおそろい。
あの日のまんま。
「彼女がメシ作ってくれるから弁当いらない。」
そう言って家から出ていったあの時の照れくさそうにはにかんだ顔。
それが最後にみたあの子の…。
今にも手放しそうな意識の中で青年はこう呟いた。
「そうか、君には僕がそう見えるんだね。」