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「図書室の私的利用は認めていません。そんなことも知らないんですか?」
図書室にいる図書委員は、そう言ってあっさりと副島の提案を切り捨てた。
……まあ、そうなるよな。そうならないほうがおかしいと言ってもいいくらいだ。俺は、副島の肩を慰めるかの如くぽんぽんと叩く。
しかし、それだけじゃあ、副島は諦めていないようだった。
「私的利用じゃあないわ! 同好会を作るんだから、公的利用の一つになるはずよ! そうじゃあないかしら?」
「では、公的利用になる理由をこちらの用紙に記載してください」
そう言って手渡されたのは……なんじゃあこりゃあ? 『図書館利用用紙』? こんな申請用紙があったなんて聞いたことが無いぞ。
「その申請用紙に記入していただいて、利用する期間を記載していただいて、それを図書委員の総締めをしている真奈木先生に提出してください。ま、さっきの言い分だと通るかどうか怪しいですけれど」
「通るかどうかわからないから、先ずはあなたに話を通しているんじゃあないかしら」
……こりゃ堂々巡りだ。
「なあ、副島。これ以上話を続けていても何も生み出しやしないぞ。さっさと諦めて空き教室でも借りるとかそういうプランに切り替えたらどうだ? 別に魔法の研究で図書室が使えなくなるというわけじゃあ無いんだし」
「魔法?」
俺の言葉を聞いていた図書委員は、目を輝かせた。
……俺、何か不味いことでも口にしたかな。そんなことを思いながら、俺はさらに話を続ける。
「あー……こいつが言っていなかったかもしれないが、実はこいつが作ろうとしている同好会は『魔法研究同好会』。現代に住まう魔法使いや魔法の実態を研究するのが目的なんだ。そんなことを言われて、理解してくれるとは到底思えないのだが……」
「理解できますよ」
「え?」
そっと、かけていた眼鏡を外す図書委員。その仕草にはどこかエロさも感じさせるのだが……いやいや、そんなことを言っている場合じゃあ無くて!
見る目を変えたのは副島だった。副島は彼女が持っていた眼鏡をじっと見つめていると、やがて一言口にした。
「何故だて眼鏡かと思っていたが……、成る程、その眼鏡、魔力を『抑制』する眼鏡だな?」
こくり、と頷く図書委員。
「その通り。わたしと、わたしの家系自体は魔法使いではありませんが、わたしの目は魔力を浴び続けてしまうと、視力を失ってしまう。だからこのように眼鏡などを使って魔力を取り込むのを防がないといけない、といったわけです。……おわかりいただけましたか?」
「ああ、よく分かった。済まなかったな、わざわざ眼鏡を外させて貰って。別に構わないぞ、眼鏡を外さなくとも、説明だけでわたしは理解できる。何だってわたしは、」
「分かります。魔法使い、でしょう?」
「なっ……! 分かっていたのか」
目を丸くする副島と、それに対抗するように立ち上がる図書委員。
何というか、すっかり俺、蚊帳の外にされていません?