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俺は部活に入っていない。理由は部活動の練習がいかにも面倒くさいからだ。だから六時間目の授業が終わったら、さっさと用意をして帰宅する――それが俺のルールだった訳だったけれど――。
「ちょっと待ってよ、一つ協力してくれない?」
突然、背後にいた副島が急にそんなことを言い出した。
何を突然、と思っていたのだが、俺は無視して帰宅の準備を進める。
「もし断るようなら、さっき言ってた話を正式にセクハラとして警察に突き出すけれど?」
「ちょっと待ってください、それはどうかと思うわけですけれど?」
「だってあなたが…………わたしのパンツを見たのは間違いないわけだし。それに、今は女尊男卑と言ってもいい時代。あなたが仮に否定してもわたしが突き出せば、犯人として認められる確率のほうが高いと言っても過言では無いでしょう?」
「それは最悪だろ。性を利用していると言ってもいい」
「利用し尽くさないと、女性として生まれてきた意味が無いでしょう?」
「そういうものか」
「そういうものよ。……さて、どうする? わたしの言うことに付き合ってくれるなら、今回のことはさっきのパンチだけで免じてあげるけれど」
「パンチだけで良いなら、今からのことに関わる必要なんて無いじゃあないか。俺は帰らせて貰うぞ」
そう言って俺は用意を済ませたので、立ち上がった。
しかし、そこから先が――動かない。
どうしてか分からない。けれど、動くことが出来ない。
まさか、これも魔法の一種なのか?
「そう。これも魔法の一種。『人間の動きを固定する』魔法。一応言っておくけれど、周りからはあなたとわたしは話していて止まっているだけに過ぎない、と思っているだけ。だから、あなたが助けの声を上げても無駄。はっきり言って、あなたは運が悪かったと言ってもいいけれどね」
「運が悪かった? お前の悪知恵に回された、の間違いじゃあないのか?」
「そりゃあ、そうかもしれないけれどね。けれど、わたしはどうしてもここにやってこなくちゃいけない理由があったの。そして、あなたとも出逢った理由も『偶然』のようで『必然』だったといってもいいかもしれない。…………パンツを見られたのは、運が悪かったと言ってもいいけれど」
「いや、それについてどうでも良いと言っても過言では無いのだけれど。それに、何がしたいんだ? いきなり魔法使いなんて自己紹介したところで、それを容認してくれる高校をよく見つけることが出来たよな」
もうすっかり俺は彼女が何故魔法使いを名乗ったのか、それについて質問をすることになっていた。疑問を浮かべていた、といってもいいだろう。魔法使いが一般世界にやってくることは普通ならあり得ない。だから何故魔法使いがやってきたのかということについて、それについて質問をしないと、俺の中で納得しないのだ。