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「でも、使えるか使えないか、と勝手に思い込むのも良くないだろ?」
「はあ? 何だよ、それ。確かに魔法使いはこの世界に居ると言われているけれど、俺たちの世界と交流することは殆ど無いじゃあないか。だから先生も訝しんでいたんじゃあないか? 魔法研究同好会なんて同好会、良く許可が下りたよな」
「先生の中に『魔法オタク』が居てね……。鳴海先生、そうなんだよ」
「鳴海先生が? へえ、珍しいこともあるもんだな。まるで狙っていたかのように、魔法オタクが居るような……」
ずい、と副島が一歩前に出る。
「フィールドワークの邪魔になるから、さっさと出て行きたいのだけれど」
「お? お、おお。済まないな、分かった。ま、生徒会に目をつけられないようにしろよ。あいつらに目をつけられると面倒なことになるからよ」
そこまでのことはしないつもりだし、やらないはずだ。
そう思って俺たちは玄関から外に出て行くのだった。
◇◇◇
「さあ、フィールドワークの始まりよ!」
学校近くの喫茶店に、俺たちは集まっていた。
……俺はフィールドワークの意味を何か勘違いしているのだろうか? 否、断じて否。そうではないはずだ。間違いなく、フィールドワークは『外回り』とかそういう意味を成しているはずだ。
にもかかわらず、今俺たちは喫茶店に居る。制服姿で居るから普通の客に比べると目立つというもの。出来ることならさっさと脱出してしまいたいところではあるけれど。
「先ずは、このポイントに向かおうかなと思っていてね」
地図を広げ出す副島を見て、水や珈琲の入ったカップをどかしていく。お前は一体どれくらいの大きさの地図を持ってきたんだ。というかそれぐらいの地図を広げるぐらいだったら部室でも出来たはずだろうに、どうしてわざわざ喫茶店に入る必要があったのか。
「瘴気というエネルギーの塊を探すのが今回の目的よ」
「瘴気?」
何だかまた聞いたことのないワードが飛び出てきたな。
「瘴気はエネルギーの塊。あ、エネルギーというのは魔素のことね。魔素は循環されていくのだけれど、時たま循環しきれない魔素が塊になって瘴気としてなってしまうの。そうなると普通の人間にも悪影響を与えてしまうことがあって……」
「それを解除する方法は?」
「その瘴気を使って、魔素に分解し、魔法を使ってやれば良いだけのことよ。勿論、そう簡単に言える話ではない、ということはわたしにも理解できる話だけれど」
「……うん? 何だか、聞き分けの良いような感じがするが」
「わたしは昔から聞き分けが良いの! ……ともかく、魔素の分解が小難しいところね。それが上手くいけば魔法はどんな魔法を使ったって良い。それこそ、今持ち込んでいる『瓶』に閉じ込めてしまっても良い」




