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そういうわけで、その日は魔法の講義のみで幕を下ろしてしまった同好会であった。
同好会の意味はあったのか? と言われると、それ以外の同好会にケチをつけてしまうことになってしまうから、言わないでおく。例えば鉄道研究同好会とか、コンピュータ同好会とかがそれに含まれる。
帰り道は一人だ。だから一人で考えることが捗ってしまう。それは致し方ないといえばそれまでなのだが。
それにしても、今日はひどい有様だった。本当ならば断ってしまいたかった『入会』だったが、あいつが魔法を使って強制的に入会させるとは驚いた。そこまでして俺を入れる理由があるというのか?
……いや、考えたところでそれは負けだ。
結局の所、あいつの考えに乗っかっている時点で負けなのかもしれないけれど。
「あら、ボートくん」
昇降口を出たタイミングで、ばったりと茅さんに再会した。
これは偶然か、或いは天の恵みか。いずれにせよ、暇だった帰り道に一輪の花が咲いたような気分だ。
「帰りですか」
「そうですね。図書室の鍵も返してきたところですし」
図書室の鍵は、あいつが返してくれれば良い物を、いつも図書委員の茅さんに返却させようという魂胆なのだろうか、茅さんに鍵を手渡して自分は魔法の研究が忙しいからといって帰って行ってしまう。まったく、自分勝手な会長だ。
「途中まで、一緒に帰りませんか」
「そうですね。……一緒に帰りましょうか」
茅さんの了解を得て、俺たちは二人で帰ることになった。
◇◇◇
帰り道。
とはいっても、二人で帰ることになったからといって何かアイデアが浮かぶとか、そんなことは無くて、結局は今日の『講義』の感想だらけが並ぶことになった。
「どうでしたか、魔法の講義。難しくは無かったですか。俺なんか、ノートにいろいろと書いたんですけれど、全然さっぱり分からなくて。……こりゃあ、帰ってからも確認しなくちゃいけないですね」
何せ、明日は復習したかどうか当てるからね! なんてことを言ってきたためだ。もしそこで『分からない』なんて言ったら何をされるか分かった物ではない。平和的に解決するためには、今日の講義を復習するしか道はないのだ。授業の内容ですら半分も理解できているか怪しいというのに、余計なことを追加してきやがって、と俺は嘯く。
「まあ、魔法書が見つかるまでの辛抱ですよ。ファイトです、ボートくん」
「……まあ、それもそうですけれど」
その後。
他愛もない会話をして、俺は曲がり角で茅さんと別れて、家に帰宅した。
夜、魔法のノートを確認したが全然さっぱり理解できず、結局復習など一つもせず、そのまま眠りに就いたのは、また別の話。
こうして、魔法研究同好会の一日目が終了するのだった。




