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「魔法使いに見えない……って何よ、それ。でも、その眼鏡、魔力から目を守るための眼鏡でしょう? だったら、魔力というのを感じやすい身体だったなら、わたしの持つ魔力にも気づけたのではなくて?」
「ええ、だから、普通の人間では無いけれど、でも魔法使いとは思えなかった。それがわたしの価値観であって、わたしの生き方に則って得た思考の一つよ。まあ、それが上手くいった試しは半々なのだけれど」
「で、今回は悪いほうに傾いた、というわけね」
その言葉に茅さんは頷く。
成る程、茅さんにも茅さんなりの考えがあって、ここに入ろうと思った――いや、それについては確認出来ていないぞ。
「そういえば、茅さん、どうしてこの同好会に入ろうとしたんですか。あ、無理矢理入らされたのならそれも正直言って貰って全然構わないので」
「あなた、いい加減にしなさいよ」
おっと、手が滑った。
しかし、その手はガードされた。
「が、ガードされただと!」
「何度もその攻撃が通用すると思ったら大間違いよ! で? どうしてここに入ろうとしたの? 順序が逆になってしまったけれど、教えてくれると後々嬉しいかな」
「わたし、生まれつき魔力に弱い身体なのよね。それをどうにかしたくて、今の普通の学校に通っている訳なのだけれど。もし魔法使いのあなたと研究していけば、もしかしたら何か良いことが見つかるかもしれない。そう思った。以上。……これで良いかな?」
「完璧っ! 完璧な答えよっ! まあ、ボートと比べれば百倍最高な回答よ!」
「俺は無理矢理入れられたからな」
いてっ。蹴ってきやがったこの女。
ま、さっき俺も蹴ったからこれで貸し借りなしか。
「と・も・か・く! わたしとしては、そういうきちんとした人間を待っていたのよ! 魔法研究同好会として、魔法研究同好会の立ち位置として、そういう人間がいることは同好会の立ち位置として最高な存在であると言っても良いわ! あ、あなたのことを利用するという訳では無くてね」
「百パーセント利用する気満々じゃあねえか。何か同好会の意義を質問されたときに、どう答えるつもりだ、お前は?」
「魔力に弱い会員がいて」
その時点で使う気満々じゃあねえか!
俺はツッコミを入れようとしたが、これ以上ツッコミを入れたところでそれは野暮だと気づく。だからもう何も言わない。何も言いたくない。何も言うことはない。三段論法だ。間違った使い方かもしれないが。
「……で、何をするのかしら。二人とも? まさかここで駄弁って終わるつもりは無いと思うのだけれど」
茅さんはすっかり話を引っ張る役割になってしまっている。それについて俺は申し訳ないと思いつつも有難いと思っていた。そういう人間が一人でも居ないと、こういう副島のような引っかき回す人間についていくことが出来ないだろう。或いは、ついていくというよりかはついていかざるを得ないと言えば良いだろうか。




