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ひとえに。
魔法と魔術の違いは、違っているようで同じような学問である。魔術が魔方陣と詠唱に分かれていて、魔方陣を予め描くか、即興で描くか、或いはコンパクトに保存しておいた薄紙の上に魔方陣を描いたものを用意しておく必要があり、さらに詠唱も、独自の構文によって構築されているために、いわゆる『魔術師』という存在が少なくなっていった。
その理由は、前述した通り、魔術の小難しさ故。
魔法は術士の身体を循環を元にしたファクターとして、詠唱のみで魔術を発動出来るシンプルな術式である。
魔術師は少なくなり、代わりに魔法師という職業が増えていった、西暦二〇四〇年。
それは大事だと思っているかもしれない夏のある日。
それは大切だと思っているかもしれない夏のある一日。
それは普遍的だと実感しているかもしれない夏のある日。
その『魔法使い』は、俺の目の前に訪れた。
祖母が書いたという魔法書を持って、俺の目の前に現れた。
しかし、その魔法書を目の前で盗まれたことに激怒したそいつは――俺に一緒に魔法書を探せと宣ってきた。はっきり言って理解しがたい。度し難いことである。サンタクロースが目の前にやってきても普通そんなことを言い出す人間は居やしないだろう。あ、でもそいつは魔法使いだからそういう常識が通用しないのか。しないからって言い訳すればいいって話じゃあないがな。
そうして、物語は幕を開ける。
それがどういう物語になるのか、俺にどういう影響を齎すのか――未だ知るよしもない。