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934話 その後……‐7

 連絡を終えたエリーヌは、浮かない表情をしていた。


「……タクト」

「どうした?」

「ヒイラギ様とモクレン様が、タクトに話があるそうなので今から、此処に来られるんだけど……」

「何かあったのか?」

「……タクトが怒ることには間違いないと思うの」

「俺が怒る?」


 エリーヌの言っている意味が分からなかった。

 背後が一瞬、光る感じがしたので振り向くと、ヒイラギとモクレンが立っていた。


「タクト。使徒の務め、御苦労様でした」


 ヒイラギの言葉に、俺は頭を下げる。


「エリーヌから聞いたが、魂の消滅を選択したというのは本当なのですか?」

「はい」


 俺は即答する。


「分かりました。タクトの意思を尊重します」

「ありがとうございます」


 俺はヒイラギに向かい再度、頭を下げた。


「本当であれば秘密なのですが、黙っておくのも悪い気がしますので、タクトには伝えておきます」

「何でしょうか?」

「冥界のオーカスより神候補として、ある魂を預かっております」


 俺はヒイラギの言葉を聞いて、エリーヌの方を見るが、エリーヌは申し訳なさそうに顔を下に向け、俺と視線を合わせないようにしていた。


「その魂は、ユキノですか?」

「はい。彼女の意志で神になる決意をしたようです」


 ヒイラギとモクレンの所に話が上がっているということは、エリーヌは既に知っていたことになる。

 俺のことを考えて敢えて、話さなかったのかも知れない。

 事実、ヒイラギやモクレンの登場が無ければ、俺は何も知らないまま、魂を消滅させられていた。


「稀に見る純粋な魂の上、一時とはいえ神の巫女になるくらいの魂です。神候補になる素質はあったのでしょう」


 モクレンは淡々と話をする。


「モクレン、タクトの心中を察しなさい」

「申し訳御座いません」

「タクト。ユキノの魂は私との面接も終えています。結果は言わずとも分かりますよね?」

「ヒイラギ様の御眼鏡に適った……と、いうことですね」

「そこまでのことではないが、十分に合格だったよ」


 ヒイラギは嬉しそうに話すが、俺に向かって言葉を選んでいるようにも思えた。


「私たち神の間には、恋愛感情というものは無い。担当した世界を適切に判断して管理するだけの存在だ」


 ヒイラギの言葉は、仮に俺とユキノが記憶を失って神になったとしても恋愛関係になることは無く、俺が思っているようなことは起きないと言っている。


「ユキノは君のように素晴らしい使徒と共に、平和な世界を築きたいと言っていたよ」

「……そうですか」

「心配しなくても大丈夫だよ。今のタクトのことや、エクシズのことは何も話をしていないからね」


 俺はユキノと会うことは出来ない。

 何故なら、ユキノは俺が死んだことを知らないからだ。

 絶対ではないが、出来れば知られたくない。

 だからこそ、冥界でなく神界に魂が連れていかれたことに、少しだけ安心していた。

 それにユキノが自分の意志で選んだのであれば、俺が口を出すことではない。

 もう会う機会はないが、会っても俺の知っているユキノとは別の人物だ。

 ユキノとの時間は十分に過ごしたつもりだ。

 後悔がないと言えば嘘になるが、納得はしているつもりだ。

 だからこそ、ユキノの死も素直に受け止めることが出来た。


「その……私が言うのも変ですが、ユキノのこと……宜しくお願いします」

「うん」


 相手は神。しかも上級神だ。俺が何を言ったところで変わらないことは、重々承知している。

 しかし言葉にせずには、いられなかった。

 ヒイラギも俺の気持ちを察してか素直に頷いた。


「会うのは、これで最後になるね」

「そうですね。ヒイラギ様にモクレン様、いろいろとありがとうございました」

「こちらこそ。使徒としては十分な働きをしてくれたことに感謝します」


 俺は、ヒイラギにモクレンに最後の挨拶をすると、二人の姿が目の前から消えた。

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