92話 暴漢の目的!
「貴方の能力には、毎回ヒヤヒヤさせられるわ!」
「いや~、スマン!」
領主の屋敷を出ると、シキブが愚痴りだした。
「それで、これからどうするの?」
「街の被害者に聞き込みをしたいので、教えて貰っていいか?」
「それなら、ギルド会館に集まって貰うようにするわ」
「それは、助かる」
シキブが被害者に連絡をして、手の空いている数人がギルド会館に集まってくれた。
俺は、その時の状況を詳しく聞いた。
犯行時間は、決まって深夜。
共通するのは、事件の前後の記憶が曖昧だという事。
次の日は、『MP』切れで体調がすぐれない事。
深夜とはいえ人通りが多い場所でも、目撃者が居ないのも気になる。
酒飲みが多い時間帯なので、仕方が無いのかも知れない。
何故、『MP』のみを奪っていくのか?
そもそもその様な事が出来るのは、魔族に限定される。
ギルドも魔族の犯行だろうと予想はしている。
魔族なら、目的はなんだ?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
夜になり、シロに領主の館にある噴水周りの偵察を頼み、クロには街全体の警護を頼んだ。
俺は、とりあえず街を徘徊する。
数時間経ったが、特に変わったことも無い。
夜が更けるにつれて、酔っ払いが増える光景はいつもと同じだ。
「主、怪しい女性を発見しました。 主から見て北東の方向になります」
「分かった、すぐに行く」
クロに案内されて現場に着くと、ひとりの男性が既に倒れていた。
ステータスを見てみると、襲われた症状と一致した。
ユニークスキル持ちでなくて良かった……
「クロ、その女は何処に行った!」
「領主の屋敷に向かいました」
俺は、シロの所まで【転移】した。
屋根上から、シロとクロとで噴水を確認する。
数分後、どこからともなく女性が姿を現した。
確認するのと同時に、噴水まで一気に移動する。
「よっ!」
いきなり声を掛けられたのか、女性は驚いている!
薄暗い為、はっきりと確認は出来ないが、
「魔族が、こんなところでなにしてるんだ!」
女性は何かしている。
攻撃か?
「なんで、あんたには効かないのよ!」
「何が?」
女性は、うろたえている。
逃げようとするが、先回りして逃がさない様にする。
雲の切れ間より、月の光が差し込むとその姿を現す。
魔族決定だ!
とりあえず、事情を聞く為に連行するとしよう!
「もう一度聞くがお前、何者?」
「えっ!」
「魔族だよな?」
「はい」
唐突な質問で、考える間もなく答えさせる。
魔族確定したので、【雷撃】で気絶をさせようと思ったが、死ぬといけないのでそのまま担ぎ、俺の宿まで【転移】で移動した。