919話 終活‐6!
「大丈夫なのか?」
「なにがだ?」
「スーノモジャのことだ」
「心配ない。スーノママに任せた。スーノモジャ、自分に自信ない」
「自信がないから、スーノピカリたちと一緒には行けないのか?」
「そう。弱いと他の奴にも迷惑が掛かる。最悪、死ぬ」
スーノパパの言いたいことは理解できた。
スーノモジャが足を引っ張った時、その場にいる全員が悲惨なことになると言っているのだろう。
「スーノモジャも、本当は強い。でも……今はダメ」
スーノパパも悩んでいるようだった。
俺はスーノモジャが自分に自信を持てない理由があるのではないかと思い、スーノパパに聞いてみる。
スーノパパは小さい頃に、自分のせいでスーノブラボーが死んだことが原因だと話してくれた。
スーノブラボーは、内気なスーノモジャとは対照的に活発な子供だったらしいが、スーノモジャが、一人で勝手に遊びにいってしまう。
その時、スーノモジャはイエティに襲われて、命を落としそうにあるが、スーノモジャを探しに来ていたスーノブラボーに助けられるが、逃げる時にスーノブラボーはイエティから攻撃を受けてしまう。
戻ってきたスーノブラボーは、そのまま倒れ込み、意識を失う。
そして――数日後に、スノーブラボーは雪へと姿を変えてしまった。
スーノブラボーの魂を引き継いで、次の雪人族が誕生するかとも思ったのだが、未だに誕生していないようなので、俺の考えは違っていたようだ。
以前に聞いた話では、一番多いときで九人で生活していたそうだ。
つまり、雪人族も々に数を減らしている。
原因は不明だが、スーノモジャは、この件で責任を感じているそうだ。
話を聞いた俺は、スーノモジャが自分で乗り越えなければならない問題だと感じていた。
俺たちが手を貸したとしても、スーノモジャのためにはならない。
それにスーノパパも、スーノモジャが自分で問題を解決することを望んでいるようにも感じていた。
種族が違うとはいえ、家族への思いは思いなのだとも感じた。
スーノパパに話すか悩んだが、二人しかいないこともあり、俺はユキノのことを隠して、自分の寿命のことを話す。
寿命という概念がないのか、理解するのに時間が掛かった。
「タクト、死ぬ。もう、会えない?」
「あぁ、会えない」
「そう……タクトとの別れ……寂しい」
「俺も寂しいぞ」
「スーノママたちも寂しいと思う」
「俺が死んだらシロが伝えに来る。その時にでも、スーノパパから伝えてくれ」
「……分かった」
スーノパパと三十分以上、話をしていただろう。
スーノママがたちが、スーノモジャと一緒に戻ってきた。
スーノモジャは元気がない。
おそらく、スーノママから叱られたのだろう。
俺にも謝罪するスーノモジャ。
「スーノモジャ。スーノブラボーが、そんな姿を見たら、どう思う?」
スーノモジャにスーノパパが問い掛けた。
突然のことに、スーノモジャは答えられないでいた。
「スーノモジャの姿を見たら、スーノブラボーは怒ると思う」
スーノママがスーノモジャの代わりに答えた。
「スーノモジャは弱くない。自信を持つ」
スーノパパなりに励ますが、スーノモジャの心に届いているかは分からない。
「どうしたの?」
スーノピカリとスーノララが帰ってきた。
「スーノモジャ、元気ない?」
落ち込んでいるスーノモジャを気にしていた。
元気づけようとするスーノピカリとスーノララだが、今のスーノモジャには、青の言葉さえ苦痛でしかないだろう。
しかし、スーノララはスーノモジャが帰って来た時の笑顔が好きだと話す。
スーノピカリも同じだと、続けて話す。
「スーノピカリもスーノララも、スーノモジャが好きなんだな」
「「うん」」
スーノピカリとスーノモジャは、同時に答えた。
「スーノモジャ。二人に劣っていると感じているかも知れないが、スーノモジャにはスーノモジャしかない良さがあるんだぞ」
「そう。スーノモジャはいい子」
俺の言葉に、スーノママも頷き話す。
とはいえ、スーノモジャが自分に自信を持つのには、まだ時間が掛かる。
子供を育てる大変さの片鱗を少しだが感じていた。
ユキノはスーノモジャのことを、どのように感じていたのかも気になっていた。
雪人族の問題に、どれだけ俺たちが入り込んでいいのかも分からない。
俺はスーノモジャが元気になった姿が見られるのだろうか?
スーノパパたちと別れる時まで、その事だけを考えていた――。