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905話 可愛らしい娘!

 俺たちはルーカスたちに会うために、城へと移動する。

 ルーカスから命令があったのか、俺たちを【転移扉】のある部屋の前で騎士たちが、待っていた。


「御姉様、お帰りなさいませ」


 ユキノの妹で第二王女のヤヨイが騎士たちの後ろから姿を現して、俺たちを迎えてくれた。

 騎士たちは表情も変えずに、自分の仕事を全うしていた。

 しかし、この騎士たちは【転移扉】のことは知らないはずだが、俺たちが部屋から出てきて、疑問に思わなかったのだろうか?


「……御姉様、このお子様は?」


 エリーヌを見て首を傾げながら、ヤヨイはユキノに聞く。

 まぁ、当たり前の反応だ。


「うふふ、内緒です」


 嬉しそうにヤヨイの質問に答えているが、ヤヨイはユキノの返答に困惑していた。

 そして……それ以上、なにも言わなかった。

 ユキノとエリーヌ……俺の知らないところで、なにか良からぬことを考えているようにも思えた。


「では、ご案内します」


 ヤヨイが俺たちよりも先に歩き出して、ルーカスたちの待っている部屋へ案内をしてくれるようだ。

 案内してくれるヤヨイは、楽しそうに話すユキノとエリーヌを、チラチラと見ていた。

 エリーヌの存在が気になっているのだろう。

 ユキノとエリーヌの楽しそうな声のみが、廊下に響いていた。


 ――ヤヨイに案内されて数分後、ルーカスたちが待つ部屋に着く。

 部屋の前で護衛している騎士たちが、扉を叩く。

 部屋の中からアスランの声で、入室許可を伝える言葉が聞こえた。

 騎士が扉を開けてくれたので、ヤヨイが最初に入室する。

 続けて、ユキノ。横にいるエリーヌとは手を繋いでいる。

 俺とシロ、クロは後ろから見守る。

 ユキノが久しぶりに会うルーカスたちに、招いてくれた挨拶をする。

 しかし――と、いうか当たり前だが、ルーカスたちの視線は見知らぬエリーヌに向けられていた。


「……ユキノよ」

「はい、なんでしょうか?」

「その……隣にいる子供は?」


 ユキノは、その言葉を待っていたかのように嬉しそうな顔をしていた。

 そして、エリーヌと顔を見合わせる。


「エリーヌちゃんは、私とタクト様の娘です」


 ユキノの発言にルーカスが立ち上がる。

 立ち上がった拍子に、テーブルの上にある飲み物が入ったグラスが倒れる。

 しかし、イースやアスランは、そのことに気を囚われることなく、俺たちの方を驚いた表情で見ていた。


「御姉様と、タクト様のお子様……」


 横にいたヤヨイも同じように驚き、信じられない表情でエリーヌを見ていた。

 そのヤヨイの表情にも、思っている通りの表情だったのかユキノは満足そうにしていた。


「エリーヌちゃん。皆様に挨拶しましょうね」

「はい」


 エリーヌは元気よく返事をする。


「初めまして、エリーヌです」


 エリーヌもエリーヌで、自分の役割を全うするかのように、可愛らしい娘を演じている。


「……」


 エリーヌはユキノの顔を見る。


「御爺様と御婆様と、伯父のアスランお兄様。こちらが叔母のヤヨイですよ」


 ユキノがエリーヌに家族を紹介する。

 もちろん、エリーヌは知っているはずだが、ユキノを喜ばせようとして知らない振りをしているんだろう。


「おじいちゃま、おばあちゃま」


 ルーカスとイースに向かって、戸惑う演技をしながらルーカスとイースに笑顔を向ける。


「お、おばあちゃま!」


 イースは、おばあちゃまという響きが新鮮なのか、興奮を隠しきれずに叫ぶ。

 反対にルーカスは、自分が祖父になったと思い、ショックを受けていた。


「……挨拶はこれくらいでいいか?」


 とりあえず、話を切り上げないと永遠にループする危険を感じた俺は話を切り上げる。


「そうだな……まぁ、とりあえず座ってくれ」


 いきなりのことが多すぎて混乱しているのか、それとも自分が祖父になったことからのショックから立ち直っていないのか、覇気のない声で俺たちに小さな声で椅子に座るよう促す。

 なにやら面倒なことになりそうな予感しかしない。

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