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884話 シーランディア -3!

「では、次の件に移っても宜しいですか?」

「はい」


 モクレンは次の話題へと話を変更した。

 その内容は、ピンクーのことだった。

 既にエクシズでも、かなりのレベルになっているピンクーなので、そろそろ本来の役割である神の眷属に戻したいということだった。

 俺としても元々、その約束なので問題はない。

 シロやクロは寂しがるかもしれないが……。


「出来れば、シーランディアの件より前に戻したいのです」

「それは又、急な話ですね」


 俺としては、シーランディアの後だと思っていたので、少し驚いた。

 そして、モクレンがピンクーをシーランディアの戦いに参加をさせたくないと思っているのでは? と勘繰る。


「ピンクーでは、シーランディアとの戦いでは、戦力にはなりません。戦いに参加したら、死ぬ可能性もあるでしょう」

「そんなに相手は強いのですか?」

「はい。戦闘経験が乏しいピンクーには、厳しいでしょうね」


 たしかに、相手は集団での戦いを基本としているため、ピンクーが一人で相手をすることになったら、厳しいどころの話ではないだろう。


「分かりました。戻り次第、ピンクーに話をします」


 ……ん? 俺の頭の中に疑問が浮かんだ。


「その、ピンクーは俺いや、私が名付けたことで、飛躍的に強くなっているのですよね? 眷属に戻るということは、私との契約も解除されるということでしょうか?」

「はい。貴方との契約を解除したとしても、あの世界(エクシズ)での活動に支障はきたさない筈です」

「そうですか……」

「あそこまで強くして頂き、本当に感謝しております」


 モクレンは軽く頭を下げる。


「その……ピンクーは、眷属その二という名に戻るのですか?」

「はい――と、言いたいところですが、契約は無くなったとはいえ、呼び名はピンクーで構いません。貴方が再度、名付けることも出来ませんので、気になさらなくて大丈夫です」


 なにが大丈夫なのかは分からないが、呼び名は今迄通り『ピンクー』でいいようだ。

 しかし、先程からエリーヌは一言も発していない。

 モクレンの言われることに対して、相槌を打つだけだった。


「では、よろしくお願いしますね。あとは、エリーヌと二人で話し合って下さい」


 モクレンは、そう言い残して消えた。


「……詳しく説明して貰おうか⁈」


 俺はエリーヌに詰め寄る。


「その、私だって良く分かっていないんだよね。モクレン様とヒイラギ様から、簡単に説明を受けただけだし……」

「だけど、エリーヌがエクシズの担当神だろ?」

「そうなんだけど、アデム様……じゃなかったアデムとガルプの後始末は、かなり大変なのよ。タクトたちはエクシズだけだけど、アデムは他の世界でも気付かれないように、いろいろとしていたのよ」

「それは他の世界の担当神の中に、ガルプと同じような奴がいたってことか?」

「ガルプのように酷い神はいなかったけど、上級神であるアデムから、その世界に住む生物のサンプル提供には、疑うことなく応じていたみたいよ」

「……そのサンプルを、エクシズで何かの実験に使っていたってことか?」

「そこまでは分からないけど、他の世界でも蜂人族や、蟻人族と似たような種族はいるのよ。その世界は、女王が支配しているんだけどね」


 エリーヌが言った世界で蜂人族や蟻人族が生態系の頂点にいれば、女王の命令には絶対服従の集団が最強だろう。

 そして、その世界では種族間の争い問題なども起きないのではないかと感じた。

 ……そういうことか‼

 俺の中である仮説が浮かぶ。

 アデムは、他の世界で人型へと進化を遂げた魔物がいることに興味を持つ。

 それが蜂人族や蟻人族だ。

 互いに似た性質の持つ種族同士を争わせた時、どのような反応が起きるかを試そうとしていたのだろう。

 アデムの実験とは、他の世界で進化をした魔物などをこの世界(エクシズ)に誕生させて、新たな進化をさせようとしていたのだと考えた。

 だからこそ、他の大陸で行なっている実験に影響を与えるようなことは、なんとしてでも阻止する必要があったのだ。

 都合よく人族と魔族が対立する世界であれば、イレギュラーな魔物が誕生しても、簡単に受け入れることが出来る。

 今のエクシズは、実験をする世界としては最高の環境だったに違いない。

 都合が悪くなれば、人族や魔族を間引けばよい。

 それに最悪、破滅させたとしても何百年と掛けて同じような生態系を造り直せばいいだけだ。

 二度目になるので、そんなに難しい作業でもないのだろうが……。

 いや、二度目なのかは分からない。

 俺が知らないだけで、何千年以上前にこの世界(エクシズ)は何度も造り替えられている可能性もあるのだから――。


 火精霊(サラマンダー)のホオリンは、シーランディアの管理のようなものを第三柱だったロッソから頼まれたそうだ。

 ホオリンは断ることも出来たが、ロッソという知り合いの頼みを無下にすることが出来なかった。

 ホオリンとロッソは、ロッソの住処だった場所で偶然出会った。

 契約こそしていないが、それ以降も何度か話をする間柄になる。

 ホオリンがアーマゲ山にいることは、ロッソも知っていたので、ホオリンに封印の監視をロッソが依頼したのも理解できた。

 ロッソもシーランディアの封印が完璧でないことを知っていたのだろう。

 偶然とはいえ、いいタイミングだったとポジティブに考えることにした。

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