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883話 シーランディア -2!

 俺は【神との対話】を使おうかと思っていると、景色が変わる。

 ……俺が【神との対話】を使う前に、呼び出されたようだ。


「お元気でしたか?」


 目の前にはモクレンとエリーヌがいた。

 エリーヌが、このような小細工をするとは思えないので、間違いなくモクレンの仕業だろう。

 隣のエリーヌも緊張している面持ちだった。


「……どうですかね」


 俺は苦笑いをしながら答えた。


「私を呼び出したのは、シーランディアのことですか?」

「それもあります」


 モクレンの答え方では、俺への用件は複数ある感じだった。

 俺が気付いたことに動揺することもなく、モクレンは表情を崩さない。

 俺を呼び出したことで、話し合いを優位に進めるつもりなのだろう。


「では――」


 モクレンは、そう口を開き話し始めた。

 シーランディアの存在は、モクレンとヒイラギは知っていた。

 しかし、封印されているのでなく、海中に沈んだ島だという認識だった。

 そのため、優先順位もかなり低く、調査対象にさえ入っていなかった。

 そこに、たまたまホオリンとの会話を聞いていたエリーヌが、モクレンに報告をして、短時間で調べ上げる。

 その結果、アデムとガルプの資料改ざん――。

 アデムとガルプの思惑が分からないし、俺が行動を移す前に呼び出す必要があったと、正直に話す。


「ちなみにシーランディアで幾つかの生物が生存しているのは確認しています」


 生存している⁈

 空気も植物もないような場所で、生き続けることが可能なのか?


「どうやら、【仮死状態】というスキルを習得したようです」


 【仮死状態】って……それは疑死も出来るんじゃないのかと俺は思う。

 もし、戦うことになった場合、確実に命を奪う必要がある。


「シーランディアに生息する生物……いえ、外骨格を持つ者は殲滅して下さい」

「それは、蜂人族や蟻人族のことですか?」

「そう考えて頂いて結構です」


 なにか引っ掛かる感じもしたが、殲滅する依頼なのは間違いない。


「当然、無償というわけではありません。それなりの報酬を用意させていただきます」

「それは――」

「もちろん、アルシオーネとネロも同様です」


 俺が言い終わる前に、言いたいことを言われる。

 そして、モクレンは明確な報酬を口にしていない……聞いても、教えてくれはしないことも分かっている。

 しかし、それならアルとネロも、この場に呼び寄せていないとおかしい?


「アルシオーネとネロには、貴方から伝えて下さい」

「それは構いませんが……」


 殲滅といっても、仮死や疑死の状態だった場合、俺の【魔力探知地図】でも確認可能だろうか?

 俺の懸念を察したモクレンが、【魔力探知地図】で殲滅対象が分かるようにしてくれた。


「ロッソが施した封印が解けるのは、いつ頃なんですか?」

「予想ですと、一年以内になるかと思います」

「えっ‼」


 俺が思ったよりも遅かった。


「出来れば、封印が解ける前に向かって頂きたいと思っております」


 ……いやいや、封印も解けないのであれば、俺たちが入ることは出来ないかも知れないし、海中に沈んでいるのであれば、空気が無い可能性もある。

 俺たちが戦闘して封印している装置を破壊することも考えられる。


「シーランディアの浮上は数週間後です。それから封印が解けるまで、時間が掛かるだけです」


 シーランディアが浮上する‼

 それは、人族にとって驚愕なことだ。

 各国、特にオーフェン帝国には事前に知らせないと、混乱が生じるだろう。


「浮上した段階で、環境は地上と同様になります。もちろん、戦闘も可能です」


 つまり、浮上した段階で仮死状態から目を覚ますということなのだろう。

 モクレンは封印も脆くなっているので、外部からの衝撃には弱くなってきているそうだ。

 モクレンの言ったロッソの封印が解けるまでの時間。

 それは、外部からの衝撃が不明だから明確な時期が分からなかったのだろう。

 外部からの衝撃を抑える。

 俺の【結界】を施せばと思ったが、ロッソの封印装置には無理のようだ。


「つまり、シーランディアからは一匹たりとも外に出さず、蜂人族や蟻人族とはシーランディア内で戦って、殲滅させるということですね」

「はい、その通りです」


 果たして俺、アルとネロの三人だけで対処出来るのだろうか?

 シロやクロもいるので、何とかなるとは思いたいが、未知なる魔物に加えて、指揮命令が発達している集団との戦いになる。

 シーランディア内に他の生物がいた場合、被害を受けることは間違いない。


「殲滅が終わり次第、シーランディア全体を焼き払って下さい」

「焼き払う……」

「はい。今の生態系に影響を与える危険があるので、痕跡を残さないための処置です」

「それは、シーランディアを一度破壊して、新たな島として生まれ変わらせるということですか?」

「そう考えてもらっても構いません。その後のシーランディアをどのようにするかは、私たちには関係のない話です」


 俺は都合の良い話だと思いながら、会話をしていた。

 ガルプが行った実験の後処理だけすれば、神は関与するつもりがないということだろう。

 そもそも、ガルプがエクシズに直接関与して、実験を行っていたことが、ことの発端だ。

 それなのに、神は関与できないから、俺たちに依頼するのも違和感を感じていた。


「この件について、他に質問はありますか?」

「いえ、特には……」

「後日、なにかあればエリーヌに連絡ください」

「分かりました」


 俺は返事をして、エリーヌを見たが不安そうな表情を浮かべていた。

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