87話 大ウソつき野郎!
「アルにネロ、ありがとうな! また呼ぶから!」
「おぉ! 暇だからいつでも良いぞ!」
「またなの~!」
アルとネロは【転移】で帰っていった。
シキブとイリア、カンナは疲労困憊。
ムラサキとトグルは、上には上がいると実感したのか、自信喪失気味だ。
ローラは楽しそうに、新しい研究材料を手に入れたと喜んでいる。
この様子を見ていると、本当に申し訳ないと思う。
「とりあえず、ロードの件はタクトが気付いたという事で、ギルドには報告します」
「えっ! なんで俺なんだ? シキブでいいだろ!」
「ダメです。 魔王からの助言をそのまま発表する事は出来ませんので、タクトの責任とするしかありません」
「それ、屁理屈じゃね?」
「いえ、違います。 ローラも研究者として報告の際は協力願いますね」
「なるほど! 私のお墨付きがあれば、信頼性が増すって訳か!」
「はい。 ローラも、もう少しこの街で研究したいでしょう?」
「まぁな、この街には研究材料が多いからな。 とりあえず、発見者はタクトという事で、報告書を作成するとしよう」
「……もう、好きにしてくれ」
イリアが受付嬢に言って、飲み物を用意してくれた。
皆、少し落ち着いたようだ。
「タクトが規格外なのは知っていましたが、規格外の度合いが違いました……」
「そうだな、人族で魔王を倒すなど、ありえないからな!」
「寿命が二〇年は縮まった気がしますわ!」
それぞれが俺の悪口を言い始める。
……皆、申し訳ない!
「シキブ、隠すつもりはなかったけど、すまなかった!」
「いえ、あえていう事では無いと思いますし、言われても嘘だと思いますから……」
シキブの言葉に力が無くなっている!
「最強魔王ふたりの師匠で、伝説の聖獣を従える無職の冒険者か! たしかに、普通に聞くと大ウソつきだな!」
「確かに、そうですね」
なにかが外れたかのように皆、笑い始める。
「口止めしなくても、誰も信用しないわね」
「そうだな、普通に変人扱いだもんな!」
「タクトさんが変なのは、最初にギルドに来た時からですけどね」
「そうだ、そうだ!」
悪口に拍車が掛かっている気がする。
「タクト、ごめんなさいね。 貴方を信用していない訳では無いけど、人族にとって魔王が脅威なのは変わりないの」
「あぁ、分かっている。 ただ俺は、自分の目で見たものしか信用しない」
「そうね、貴方とは敵になりたくないと、心の底から思ったわ!」
「俺も、シキブは敵に回したくないと何度も思ったぞ!」
「なんですって~!」
重い空気が徐々に軽くなっていった。
「アルとネロを、少しでも信じくれてありがとう!」
改めて礼を述べる。
アルとネロは、俺にとっては友人だ。
友人を信用してくれたのは、やはり嬉しい。
「とりあえず、ギルマスとして監視の意味も含めて、貴方を仲間登録させてもらうけど、いいかしら?」
「あぁ、構わない。 ムラサキやイリア、ローラもいいぞ! トグルはちょっと嫌だけど……」
「お前以上にこっちがお断りだ!」
結局、皆を仲間登録した。