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862話 ルグーレの現状―1!

 ルグーレはジークよりも大きな街だった。

 しかし、城壁は崩れ落ちてたりして危険な場所も多いので、多くの衛兵たちが立っていた。

 勝手に街に入ろうとする者たちがいないように、監視する役割もあるのだろう。


「コンテツさん‼」


 衛兵がコンテツを見つけると、名を叫ぶ。


「よっ、元気か⁉」

「元気というか、見てくださいって、もう歩いていますが道が突然、綺麗になったんです」


 興奮するように話す衛兵に、コンテツとモエギは笑っていた。


「それは、このタクトの仕業だ」


 コンテツが俺のほうを見るので、俺も少しだけ笑ってみた。


「タクトって……あの有名な?」

「あぁ、あのタクトだ」


 あのタクトって、どのタクトなんだ? と疑問に感じていると、コンテツと話していた衛兵だけでなく、周囲にいた数人の衛兵の顔色が変わる。


「しっ、失礼いたしました。タクト様‼」


 全員が俺に敬礼をする。


「タクト様とは知らずに、本当に申し訳御座いませんでした」

「いや、そんなに畏まらなくても――」

「いえ、タクト様は王都を救った英雄で、ユキノ様の婚約者であられます」


 面倒臭いなと思いながらも、衛兵たちの気持ちも分かる。


「俺は、ただの冒険者なんだがな――。気持ちだけ受け取っておくから、普通に接してくれないか」

「それはできません‼」


 妥協点が無かったので、俺は受け入れることにした。


「それよりも、街に入っていいか?」

「あっ、はい。どうぞ!」


 緊張した面持ちの衛兵たちを横目に、俺たちはルグーレに入る。

 外から見た以上に街のなかの状態は、酷いものだった。

 街を分断するように建物が崩れていた。

 多分、魔物暴走(スタンピード)が通った後なのだろう。

 崩壊した建物の撤去は、殆ど終わっているようだった。

 しかし、街の人たちの顔色は、決して良いものではなかった。

 当たり前だが、街全体が暗く沈んでいる印象だった。


「俺たちは、このままギルド会館へ行くが、タクトはどうするんだ?」

「そうだな……コンテツたちが領主に会いに行くとき、教えてくれるか?」

「それは別に構わないが……セイランはどうする?」

「私は、父さんたちに付いて行くよ。面白そうな冒険者がいるかもしれないしね」

「分かった」


 俺はコンテツとモエギの二人と、仲間(フレンド)登録をした。

 これで、後から連絡をもらえることが可能だ。


 コンテツたちと別れた俺は、路地裏の目立たない場所に移動して、【転移】でマリーを迎えに行く。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「遅かったか?」

「いいえ、大丈夫よ。私の用意はできているわ」

「じゃあ、行くか!」


 再び、【転移】でルグーレに戻る。


 ルグーレの街を見たマリーは、思っていた以上の惨状に少し驚いていた。


「とりあえず、商人ギルドに行きましょうか?」

「分かった」


 マリーに従う。

 商人ギルドの場所は分からなかったので、街を歩いている人に尋ねる。

 場所は冒険者ギルド会館の目の前だった。


 マリーは商人ギルド会館の扉を開ける。

 商人ギルド会館の中は、どこか黴臭く営業しているような感じではなかった。


「すいません。誰かいますか?」


 マリーの声が建物内に響く。

 数秒後、足音が聞こえてきた。


「はい、なんでしょうか?」


 受付の奥から、犬人族の男性が出て来た。


「ここのギルドマスターと面会したいのですが?」

「あっ、私がルグーレの商人ギルドのギルマス、ドギーと申します」


 犬人族の男性は頭を下げる。


「名乗るのが遅れて申し訳御座いません。私は四葉商会代表のマリーと申します」

「よっ、四葉商会‼」


 四葉商会の名を聞いたドギーは驚き、二歩ほど後ずさる。


「四葉商会の代表が、なんの用でしょうか?」

「このルグーレの状況を教えて欲しいのです。私たちにできることがあれば、復興の手助けをしたいと思っております」

「本当ですか‼」


 受付のカウンターから飛び出す勢いで、ドギーはマリーに顔を近付けた。


「あの……少し近いです」

「あっ、すいません‼」


 ドギーは、自分の行動が恥ずかしかったのか、顔を赤らめながらマリーから離れた。

 ルグーレの現状は、食料不足が一番大きな問題らしい。

 この状況なので、食料の値段が高騰しているため、満足に食べることができない人もいるそうだ。

 ドギーも、商人ギルドとして出来る限りのことをしようとしているそうだが、打つ手がなかった。

 道も悪いため、他の街から商人が来る事もないため、日を追うごとに状況は悪化してるそうだ。

 ドギーは、商人ギルドのギルマスとして力不足だと、悔しそうに語った。


「分かりました。私たちが何とかしますので、場所をお貸しできませんでしょうか?」

「場所ですか……屋内と野外のどちらが希望ですか?」

「人が集まりやすい場所を希望します」

「分かりました。案内させていただきます」


 俺が何も言わなくても、マリーは交渉を進めていた。

 本当に頼もしい。

 それよりも、俺の存在が見えているのか分からないが、紹介などもないのだが……。


 ドギーが歩きながら、マリーに礼を言っている。


「後ろの冒険者の方は、護衛ですか?」

「えぇ、そうよ」


 俺の名を出さないのは、マリーなりの気遣いなのだろう。

 だからこそ、先程も俺の紹介がなかったのだと納得する。

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