832話 今後についてと、様々な問題……!
「それで……タクトはこれから、どうするつもりなの?」
マリーが俺の今後について、質問をしてくる。
「どうするって?」
「冒険者として続けるのか、それとも考えが変わって、王族の一員になるかってことよ」
「あぁ、そういうことなら冒険者だが、積極的に働くことはないな」
「なんで?」
フランは俺の言葉の意味が分からないようだ。
「基本的には、指名クエストだけ受注するつもりだ。俺に頼んでくるくらいだから、余程のことだろうしな」
「あぁ、そういうことね」
フランは納得してくれた。
「まぁ、なにかの拍子で、放っておけない状況に出くわしたりすれば、別だけどな」
「なるほどね。この家で、ユキノ様と住むってことで、いいのかしら?」
「あぁ。拠点は、この家にするつもりだ」
「分かったわ。私もゴンド村には頻繁に来ているから、なにかあれば相談に乗って貰うわよ」
「もちろんだ。俺に力になれることがあれば、なんでも言ってくれ!」
「なんでも! って言ったわね」
マリーの表情が変わる。
まるで、悪代官のような顔つきだった――。
「あぁ、俺にできることがあれば――だけどな」
「タクトに解決できない問題なんてないでしょう?」
「いやいや、いくらでもあると思うぞ」
「はい、はい」
マリーは俺の言葉を軽くあしらっていた。
「ところで、トグルとリベラは……どうなんだ?」
「あぁ……それね」
マリーとフランは顔を見合わせた。
「なんだ? もしかして、うまくいっていないのか?」
「そうね。まぁ、トグルが有名なので、それが問題なのよね」
「ん? どういうことだ?」
トグルは『漆黒の魔剣士』として、かなり有名な冒険者になっている。
有名になれば、いろんな人種が接触してくる。
トグルの名を勝手に利用しようとする者や、トグルに取り入って儲けようとする者など……。
とくに、トグルと結婚できれば、一生安泰と考える者もいる。
トグルは鬼人族の中でも、劣等種とされる一本角だ。
特に一本角の鬼人族女性から、言い寄られることも多いそうだ。
「そんなの、リベラがいるからって、トグルがはっきり言えばいいだけだろう?」
「たしかにそうだけど、トグルが言えると思う?」
「あっ……」
たしかに、トグルは女性が得意ではない。
とても、はっきりと断れるとは思えない……。
「トグルの性格が災いしたってことか?」
「えぇ――リベラは、なにも言わないけど、元気が無いわ」
「第三者が、どうこう言うわけにも、いかないしな」
「……普通の人なら無理だけど、タクトなら普通に言うでしょう?」
「いやいや、俺だって言わないぞ! ……たぶん」
「まぁ、どちらにしても、いい感じではないわね」
「そうか……恋愛経験が豊富な知り合いは……いないな」
「そうなのよね」
俺とマリーは、二人して大きく息を吐いた。
「忘れないうちに、フレンド登録をしてくれる?」
「あっ、たしかに!」
俺との繋がりを全てリセットされているので、友達登録さえも消えてしまっている。
「多分、タクトはこれから、同じようなことが起きるわよ」
「同じようなこと?」
俺は少し考える。
「マリーやフランに説明したように、思い出した奴に説明してまわるってことか?」
「えぇ、そうよ……」
マリーは部屋の窓から外に目線を向ける。
確かに、ムラサキとシキブが俺の部屋を見ている。
二人とも記憶が戻ったのだろう……。




