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821話 問題解決会議-5!

 アルの演説が終わり、再びルーカスが演説を始めた。

 まず、狐人族のレクタスが俺を逆恨みして、映像で「俺を信じるな!」「酷い目にあう!」といったことに対してだった。

 すっかり忘れていたが、そんなこともあったと思い出す。

 その事に対して、何かを言われた事も無かったから、完全に忘れていた。

 あの戦いでは、それ以上に衝撃的なことが多かったので、仕方が無いだろう。


 ルーカスは、あれはレクタスの逆恨みだと説明する。

 元々、狐人族で森を伐採して集落を広げようとした。

 俺を利用して、森の管理者である樹精霊(ドライアド)からの報復を受ける際に、俺に責任転嫁するつもりだったと、レクタスが居た集落の狐人族たちから聞いたそうだ。

 変だ――。

 俺は、その話を聞いて疑問を感じた。

 俺の存在を覚えている――現在の狐人族の集落の頭首はラウ爺だ。

 ラウ爺から聞いたのだろうか?

 もし、そうならラウ爺は俺のことを思い出した事になる。

 確かに、この世界で接触した人物では、それなりに懇意にしていたとは思う。

 しかし、それ以上に親しい者は多い。

 だとすれば――。


 俺が考えている間も、ルーカスの演説は続く。

 元々、宗家が分家を奴隷のように扱うことで、分家たちの不満が溜まっていた。

 俺に責任を負わせるのと同じように、分家の者たちにも罪を背負わそうとしたことで、分家の者たちによる反乱が起こり、レクタスが失脚した。

 そして、ルーカスは続けて話す。

 これは、自分たちの奴隷制度でも同じだと――同じ人族なのに、存在さえ否定される奴隷という存在意義を、今一度考える時期が来たのかも知れないと、力説する。


 確かに、レクタスの件を出せば、奴隷制度の件も上手く廃止出来るかも知れないだろう。

 しかし、階級制度を廃止することは、貴族社会で美味い汁を吸っていた貴族たちからは反発がある。

 それを承知で、ルーカスは国民に話したのだろう。

 俺が奴隷制度の廃止を頼んだ。

 今のルーカスには、その記憶は無いだろう。

 しかし、ルーカスは俺との約束は覚えていてくれた。

 俺は無性に嬉しい気持ちだった。

 ルーカスの口から、奴隷制度という言葉が出たことで、国民たちに動揺が走る。

 国王が奴隷について語ったことなど、今迄で記憶が無いからだ。


 その後も、ルーカスの演説は続く。

 何事も無く終わるだろう! と、誰もが思った瞬間――。

 大きな音が響き、魔物の襲撃で倒壊しそうな建物が崩れ始める。

 慌て叫ぶ群衆。

 逃げようにも、人が多くて逃げる場所が無い。


 俺は咄嗟に【転移】を使い、倒壊を始めた場所へと移動する。


「きゃぁーーー‼」


 叫び声が飛び交っていた。

 瓦礫が幾つか落ちたのか、怪我人もいる。

 俺は更に崩れて落ち始めた瓦礫を受け止める。

 しかし、建物の崩壊は進み、一人で対処するのは難しい。

 仕方が無いので、【アイテムボックス】に瓦礫を仕舞い、【分身】で落ちて来る瓦礫を防ごうと考える。


「手伝ってやるぞ」

「手伝うの~」


 目の前に、アルとネロが姿を現した。


「悪いな」

「出来の悪い師匠を助けるのも、弟子の務めじゃ」

「そうなの~!」


 俺は【結界】で瓦礫の落下を防ぎ、その空間で建物を崩壊させる。

 土煙も結界内だけで上がる為、近くに居た人々は不思議に感じただろう。

 しかし、自分たちを建物倒壊の危機から救ってくれたのは俺たちだと分かったようで、礼を言われる。

 アルとネロは自分たちが何故、礼を言われたのか分かっていないようだった。

 二人にとって、大したことをしたという感じでは無いのだろう。


 だが、群衆全員が、俺たちに好意的な印象を持っている訳では無かった。

 明らかに不満いや、敵意を向けている者たちとも、俺は目が合う。

 俺と目が合うと、不自然に目を逸らす。

 俺に敵わないと分かっているのか、この場で騒ぐようなことはしないようだ。

 魔族が、魔王が――いや、俺たちが憎いのだろう。

 分かってはいる。

 今後、どのように関わっていき、わだかまりを取り除けるかが課題になるだろう。

 なんにせよ、これからも困難な道が待っていることだけは確かだ……。

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