817話 問題解決会議-1
部屋には、ルーカスとアスラン、護衛衆の三人。それに、騎士団長のソディックが姿を現した。
ソディックは護衛というよりも、話し合いの参加者と呼ばれているのだろう。
その後、大臣たち数人が追うように入って来る。
「カルアも来ておったのか?」
「はい。御無沙汰しております」
カルアに気付いたルーカスが声を掛ける。
「その、ターセルの件は残念だったの……」
「はい。本人に自覚が無かったとはいえ――元護衛衆としても残念です」
「そうじゃな――」
ルーカスとカルアの話を聞いて、ターセルのことも全世界に伝わっていることを思い出す。
そして、ターセルの弟子であり、防衛都市ジークで鑑定士をしているカンナだ。
俺がカンナから頼まれて、ターセルの誕生日プレゼントを用意した。
尊敬している師匠が、魔族の手先だったと知ったカンナのことが、少し心配だった。
ここ最近は会っていないし、会ったところで俺のことを覚えていないだろう。
カルアとの会話が終わったルーカスたちは椅子に腰掛ける。
俺たちも、ルーカスたちの後に座る。
「では、話し合い始めても良いか?」
「あぁ」
「では、私が――」
話し合いは、大臣の一人メントラを主導で進められる。
まず最初に、俺とガルプの戦いは全世界が見ていたこと。
説明上、プルガリスでなくガルプと呼び方を統一すると、追加で説明された。
確かにガルプスリーにプルガリス、ガルプと呼び名が異なる。
詳しく情報を収集することも出来ないので、最後に名乗ったガルプにしたのだろう。
俺も今後は、ガルプと呼び名を統一する必要がある。
もっとも、ガルプスリーが通じる相手には、状況に応じて使い分けるつもりだ。
つまり、映像が全世界に向けて映されていたことで、俺が魔王だということをエクシズに住む者たちに知られてしまったということになる。
幾つかある問題のうちの一つだ。
メントラも話の流れで、最初に話した。
そして、二つ目の問題点。
俺が王女であるユキノを生き返らせたということだ。
これにより、ユキノを不浄な存在だとに思う者もいるだろう。
何より、王族は死んでも生き返らせてもらえたという事実。
妬みなどの負の感情が大きくなる可能性が高い。
三つ目が、アルとネロの存在だ。
もっとも恐れられて、伝説とされていた古参の魔王。
その魔王が人族に味方し、同族である魔族と戦ったこと。
これは意見が分かれるところだ。
エルドラード王国の国王は、魔王と通じていたと勘繰られても、おかしくはない。
そして、四つ目。
ターセルの存在だ。
人族の中にも、魔族の手先が居るということだ。
しかも、自分は魔族と関係ないと思っている。
誰もが疑心暗鬼になる――。
「では、一つずつ整理致しましょうか。まずは、タクト殿の件です」
「俺のことは、後回しでもいい。どうにかなる話でも無いだろう」
「確かにそうですが……では、アルシオーネ様とネロ様の件を先に――」
「妾たちも後でよいのじゃ」
「そうなの~」
「そっ、そうですか……」
メントラは困惑していた。
「俺たちよりも、国王たちの方を優先してくれ。その方が重要だろう」
「確かにそうですね。御配慮頂きありがとうございます」
メントラは俺たちに一礼する。
「アルシオーネ様とネロ様と、国王様との間で条約を結ぶことは可能でしょうか?」
「条約?」
「はい。魔族を統べる魔王様であられるアルシオーネ様とネロ様ですから、国王様というよりもエルドラード王国とで、平和的な条約などをです」
「考え違いをしているようだが、魔王は魔族を統べる存在じゃない。だから、アルとネロの二人が仮に条約を結んだとしても、アルとネロ個人としての条約になる」
「そっ、そうなんですか‼」
「俺だって魔王だが、魔族を率いている訳じゃないだろう?」
「確かにそうです――」
人族の認識では魔王は国王や、皇帝のように上に立つ存在だと思っているのかも知れない。
俺が訂正を入れたことで、メントラは代案を考える。
他の大臣たちとも相談をしていた。
先程の案に対してアルとネロが、どう考えているかまで聞く余裕は無いようだ。
本人たちは、暇そうにしているので早く終わらせたいのだろう。