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816話 説明責任ー11!

 俺は目を開く。

 エクシズに戻って来た。


 デュラハンのエテルナ捜索を続けているシロにクロ。

 一旦、ゴンド村に戻ったアルとネロ。

 どちらからも、未だに連絡は無い。


 本当に一人の時間だ。

 窓辺から移動して、椅子に腰掛けて、考え事の続きをする。


 ユキノの記憶が戻ったが、ルーカスたちの記憶は戻っていない。

 俺と婚約していることを、ユキノが口にすれば問題になるかも知れない。

 ユキノには、もう少しきちんと口止めをしておくべきだったと後悔する。

 ユキノの性格上、嬉しさが滲み出て、変な行動を取ってしまわないか不安だった。


 オーカスは「俺が蘇生させた者や、縁が深い者たち数人は記憶が戻っている」と言っていた。

 蘇生させた者――つまり、ユキノとフリーゼは完全に記憶が戻っているということだ。

 そして、縁が深い者たち――。

 これが誰のことを言っているのかだ。

 マリーにフラン。この二人は、この世界に来てから、俺との関係が深い。

 そして、シキブにムラサキ。この二人にも、俺は大変世話になっている。

 他にも、ライラやトグルにイリア、四葉商会の者たちに、ゴンド村の人々。

 ダウザーたちルンデンブルク家。

 それにルーカスたち王族。


 俺との仲間(フレンド)登録は解除になっている。

 だから、俺に直接連絡することは出来ない。


 俺に非は無いのだが、記憶が戻った奴から責められるのは間違いないだろう。

 まぁ、俺に非が無いというのも変な話だが――。


 一番の気がかりは、マリーだ。

 俺の都合で勝手に、四葉商会の代表に就任してしまったからだ。

 俺との記憶を失っている間も、色々と大変だったと思うし、文句を言われても仕方が無い。

 既に四葉商会と、俺は無関係な状態だ。

 徐々に、俺との記憶が戻ってくるとしても、多少の混乱は招くだろう。

 それは、余計とマリーに負担を背負わせてしまう気がする。


 ……駄目だ。悪い方にしか考えられなくなっている。


 俺は椅子から立ち上がり、部屋の中を少し歩く。

 部屋の中を何度も回っていると、部屋の扉を叩く音がする。

 俺が返事をすると、衛兵が俺にルーカスからの伝言を伝えて来た。

 三十分後に、この部屋に来るそうだ。


(アルたちからは、連絡が無いよな?)


 アルとネロとのことだと思った俺は、不思議に思う。

 そういえば、ルーカスたちはアルとネロが、この部屋に居ると思っているのだと、思い出す。


「分かった」


 俺は衛兵に了承したことを伝えた。

 衛兵が部屋を出ていくと同時に、アルに連絡を取る。


「どうしたのじゃ?」

「あぁ、国王がもう一度、俺たちに会いたいそうだ」

「そういうことか――こっちも、ちと大変での」

「カルアか?」

「あぁ、それもあるが……とりあえず、妾とネロは戻るとするかの」

「悪いが、頼む」

「了解じゃ‼」


 アルとの連絡を終える。

 面倒事って……。アルが、いうぐらいだから余程のことか?

 嫌な予感しかしなかった。


 数分後、アルとネロが姿を現した。

 カルアも一緒だった。

 帽子を深く被り、表情を見せないようにしている気がした。

 ロッソが死んだ事で、泣いたことを知られたくないのだろうか?


「タクトよ。ガルプスリーたちの映像は、多分じゃが全世界に映されていたようじゃ」

「全世界か……」

「あぁ。だから、妾たちがゴンド村に着いた時には、誰もが全てを知っておった」

「そうか……」


 つまり、俺が魔王だということを、この世界の人々は知ってしまったということになる。

 そして、俺をどう処分するか? この対応を間違えば、間違いなくエルドラード王国いや、ルーカスのアキレス腱となり、反勢力からは格好の餌食となるだろう。

 俺だけでなく、アルやネロたちにも同様のことが言える。

 要は、問題がより大きくなったということだけだ。

 もしかしたら、ルーカスもこの事を知ったのかも知れない。


「カルアは、俺のことを思い出したか?」

「……いいえ」


 カルアは小さな声で答える。

 俺のことを思い出していないのであれば、ロッソからの伝言は伝えるべきでは無いと思い、次の機会に伝えることにした。

 そう、「不甲斐ない師匠で悪かった」という言葉を――。

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