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808話 説明責任ー3!

「ゴンド村のことを話すのか?」


 俺はルーカスに質問する。


「いずれはするつもりだ。言い方は悪いが、人族と魔族が共存する試験的な村だということにしたい」

「……分かった」


 ルーカスが、ゴンド村を貶めるようなことはしないと信じているが、魔族との共存に否定的な輩が、問題を起こす可能性は高い。

 まぁ、アルとネロがいる時点で返り討ちにあうことだろうが……。


「妾たちの用事は、これで終わりか?」

「そうですね。後ほど、国民の前で発表する時に一緒に居て頂きたいのですが、宜しいでしょうか?」

「分かった。それまで、妾とネロは席を外した方がよかろう」


 アルは気を遣っているように思えたが、「あとは人族の問題だ」とも取れた。


「シロとクロも連れて行く。あとはお主一人の問題じゃろう」

「師匠~、頑張るの~」


 一人残されると決まった俺に、ネロが励ましの言葉を掛けてくれた。


「まぁ、なるようになるだろう」

「お主らしい、答えじゃな」

「流石は師匠なの~」


 気付くと、俺たちは笑顔になっていた。


 俺たちの話が終わったと感じたルーカスは、ソディックに目線を送っていた。

 それに反応するように騎士たちへ、アルたちを待機して貰う場所への誘導を指示していた。


「じゃあの!」

「あぁ。又、あとでな」

「ばいばいなの~」


 アルとネロに言葉を掛けて、シロとクロに【念話】で二人が無茶なことをしないか監視するように頼む。

 まぁ、大丈夫だとは思うが……。


 アル達が出ていくと、ソディックたち騎士団、大臣たちと続けて退室して行った。

 最後に残った護衛衆に、ルーカスが退室するように命令する。

 出ていく前に、ステラが俺の目の前に水晶玉を置いた。

 多分、俺の言葉の真偽を確かめる為の物だろう。


 そして、護衛衆が部屋の扉を閉めた。

 王族と俺のみが部屋に残っている。

 先程以上に、重い空気になっている。


「……その、何から話して良いか分からぬが……とりあえず、水晶玉に触れながら話をしてくれぬか」

「分かった……」

「ユキノが死に、タクト殿が生き返らせてくれたというのは本当ですか?」


 なかなか話を切り出さないルーカスの代わりに、イースが話を進めた。


「あぁ、本当だ……」

「そうですか……タクト殿は、今も代償で苦しんでいるのですね」

「誤解しているようだが、苦しんではいないし、王女を生き返らせたことを後悔もしていない」


 俺が答えるたびに、ルーカスたちは水晶玉に目線を移している。


「生き返らせてくれたのは、ユキノだけか?」

「どうして、そう思う?」

「時期等も不明だが……ユキノが殺されるとすれば、その周囲に私たちも居たと思うのが普通だ」

「なるほど――」

「それで、どうなんだ?」


 正直、【魔法反射】を使えば、この水晶玉を誤魔化すことが出来るかも知れないし、力を入れ過ぎて破壊したとしても不可抗力と判断されるかも知れない。

 しかし、ルーカスたちの前で嘘を付くのは気が引けた。


「……他に二人いる」

「二人もだと‼」


 俺の言葉に、ルーカスたちは顔を見合わせる。

 もしかしたら、自分かも知れないと思ったのだろう。


「その二人を教えてくれ」

「……一人目はピッツバーグ家に嫁いだ国王の姉だ」

「姉上だと‼」


 予想外の名前が出た為、驚きを隠せないでいた。

 同時に、フリーゼと会った時期などを思い出しているようだ。


「それは、余の生誕祭の時か?」

「あぁ、その通りだ。城を襲撃された時になる」

「そうか――」


 先程以上に暗い雰囲気になる。


「それで、あと一人とは誰になる」

「……お腹の子だ」

「……それは、姉上の子のことか?」

「あぁ、そうだ」

「しかし、それでは日にちが合わないのではありませんか?」


 指を折り、数を数えながらイースが興奮気味に話す。


「あぁ、まだ授かったばかりの命だった」

「そうですか――ありがとうございます」


 子供の命を助けた俺に王妃でなく、母として、一人の女性として礼を言ってくれた。


「タクト殿。私からもお礼を言わせて頂きます」

「覚えていないとはいえ、タクト殿に伯母様と、子供の命を助けて頂いたこと、本当にありがとございます」


 アスランとヤヨイがイースに続くように俺に向かって、礼を言う。


「ユキノ、あなたも――!」

「はい……タクト様、御自身を犠牲にされてまで、私を生き返らせて頂きありがとうございました」


 ユキノは気持ちの整理が出来ていないのだろう。

 たどたどしい態度で俺に礼を言ってくれた。


「気にしなくていい。王族の命と、俺の存在であれば、

考えるまでも無く王族の命の方が重要だ。冒険者である俺の代わりは、いくらでもいるだろう――」

「そんなことありません‼」


 俺の話を途中で遮り、ユキノが叫んだ。


「人の命は皆、平等です。王族だからとか、そんなことは関係ありません! タクト様、お願いですから……そのようなことを、おっしゃらないで下さい」


 ユキノは泣きながら、俺に訴えかけた。

 俺はユキノの言いたいことを理解していた。

 しかし、俺が惚れていたから、婚約者だったからと絶対に口にすることは出来ない。

 そう、今となっては、絶対に知られてはいけない事だからだ――。

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