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806話 説明責任ー1!

 騎士団に先導されて、王都の入口まで来た。

 魔族からの攻撃に警戒しているため、門は閉められていた。


「開門!」


 ソディックが叫ぶと、大きな音を立てながら門が開く。


「御苦労様です!」


 門番の衛兵が、ソディックたち騎士団たちに敬礼をする。

 俺たちの姿を見た瞬間から緊張しているのか、敬礼の動作を解くことなく固まったように身動き一つしない。

 当然、目を合わせることも無かった。


 街に入ると、俺たちを囲むように騎士たちが配置されて、ルーカスの待つ城まで移動する。

 街頭に出て、俺たちを見ている者。

 怖いのか、家の窓から覗いている者。

 街の人々の反応も様々だ。


「ありがとうよ!」


 俺たちに向かって、声を掛けてくれるので声の方を見ると、冒険者だった。

 その一言で、他の冒険者からも感謝の言葉を掛けられる。

 感謝されている! と感じた俺は少し嬉しかったが……


「駄目だ!」


 騎士が俺たちに何かを訴えかける子供を抑止していた。


「どうかしたのか?」

「はい……」


 騎士は多くを語ろうとしなかった。


「お願いします」


 まだ、小さな子供は泣きながら騎士に頼み込んでいる。

 必死で俺たちに近付けないようにする騎士。

 彼は職務をしているに違いないが、子供が可哀そうだと思い話を聞く事にする。


「タクト様。全ての人々に対応していたら――」

「分かっている」


 ソディックも俺たちのことを考えてくれていることは、分かっている。


「俺たちに何か用か?」


 目線を合わせるようにしゃがむ。

 その子供……男の子は、希望に満ちた目で俺に話し掛けた。


「お兄ちゃん。死んだ人を生き返らせることが出来るんでしょう?」

「どうして、そんなことを聞くんだ?」

「死んだお父さんを生き返らせて欲しいの」


 悪気も無く、純真に父親を生き返らせたいのだと感じた。


「お兄ちゃん、御願いします」


 俺は、この子が期待している言葉を返せないと思い、口を開こうとすると、子供の後ろにいた群衆の中から大声を上げて、女性が駆け寄って来た。


「すいません。すいません」


 子供を抱え込むと同時に、頭を下げて謝罪の言葉を言い続けていた。

 この子の母親なのだろう。

 子供が無礼な振る舞いをしたと思い、必死で許しを請おうとしていた。


「大丈夫ですよ。謝っていただくようなことは何もありません」


 母親に対して、シロが優しく声を掛ける。

 俺の代弁をしてくれたようだ。


「し、しかし……」


 母親は、怯える表情だった。


「大丈夫です。安心してください」


 シロが母親の目を見ながら、ゆっくりと諭すように話した。


「ねぇ、御願いします」


 母親の気持ちを知ってか知らぬか、子供は俺へ頼み続けた。

 子供の口を塞ごうとする母親の手を俺は止めて、子供に


「悪いが、生き返らせることは出来ないんだ」

「なんで……」

「人を生き返らせることは、本当はしちゃ駄目なことなんだ」

「でも、お兄ちゃんはユキノ様を生き返らせたんでしょう⁈」

「そうだ。だから、俺は神から罰を受けたんだ。それに、もう人を生き返らせることは出来ないんだ」

「そんな……お父さん」


 男の子の目からは涙が流れ、泣き叫んでいた。

 母親は必死でなだめる。

 この子の――父親に会いたいと思っていた希望を奪ってしまったのだろう。

 一瞬でも、父親に会えると思っていただけに、会えないと知った絶望感。

 罪悪感を感じてしまう。


「……ごめんな」


 俺は男の子に謝る。

 賑やかだった群衆は、静まり返った。

 俺は立ち上がり、周りを見渡す。


「王女を生き返らせたのは、エルドラード王国には必要だと思ったからだ。俺一人の犠牲と、王女の命だとしたら悩む必要無いだろう」


 俺はユキノに非難が集まらないようにと、街の人に向かって話す。

 王族の重要性を理解しているのであれば、俺の言葉を理解してくれる筈だ。

 それに、この子供と同じように思っていた人も多数いたと思う。

 その人たちも、同じ思いをさせてしまったのだろう。

 この場に居ない人たちは、今も希望を持っているのだと思うと、申し訳ないと感じていた。


「待たせたな……行こうか」

「はい」


 ソディックも俺の言葉を聞いていた為、神妙な顔をしていた。



「大変じゃの」

「まぁ、俺のしたことだから、仕方が無いだろう」


 アルは俺が落ち込んだと思ったのか、気を使う言葉をくれる。

 先程のことがあってか、騎士団たちも周囲への警戒が上がっていた。

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