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799話 戦後処理-3!

「アデムなりに、より良い世界を創ろうとしていたようです」

「ヒイラギ様は――いえ、神としては一つの良い世界を強く為であれば、他の世界はどうなっても良いという考えなのですか⁈」


 俺は語尾を強めるように、声を張り上げてヒイラギに言葉を返した。


「いいえ。私たちは、各々の世界を大事に考えています。決して、実験する世界などとは考えていません」

「しかし――」

「アデムが特別でした。信じて貰えないかも知れませんが……」


 俺の言葉を遮るように、ヒイラギが言葉を重ねた。

 神に対して信用を失っている俺にとっては、とても納得出来ない説明だ。

 ヒイラギも、俺の考えが分かるのか、それ以上の話をすることはしなかった。


「正直、一度騙されている私としては、信用出来ません」


 逆らったところで、俺の存在が消されると分かっていたうえで反論する。


「そうですよね。それが当たり前の反応だと思います」


 ヒイラギは申し訳なさそうに話す。


「タクト‼」


 数秒の沈黙を破り、エリーヌが俺の名を呼ぶ。


「私たちは本当に、その世界に住む人たちを幸せにしようとしているの……長い年月から見れば、確かに間違いかも知れないことをしたこともあると思う。だけど、その時は本当によくなると思ってした事なの!」

「だから、今回の件は関係ないとでも言うのか?」

「そういう訳じゃないけど……」


 感情的に言葉を発したエリーヌは、言いたいことが思うように伝わらなかったのか、続く言葉を口に出来ず、目には涙が溜まっていた。

 エリーヌは勿論、ヒイラギやモクレンが悪い訳では無いことは、頭では理解している。

 そう、頭で理解しているだけで、感情は怒りや悔しさなどが混ざった状態のまま、整理出来ていない。


「立場的に言えば、私がどうこう言える訳ではありません。神という存在に対して、それぞれの世界に生きる者たちにとっては、大した存在では無いことは、今迄の話からも分かりました。私も使徒という立場ですが、都合の良い駒程度の存在だったのでしょう」


 ヒイラギを見ながら、俺は存在を消される覚悟で話す。


「神により転移させられて、神の使徒により魔王という称号を貰い、神との取引で害をなす転移者や転生者を討伐する都合の良い存在だったアルやネロも、神の権限だか何だか分からないが、最後も神の力によって命を落としたんだ‼」


 俺は息継ぎすることなく、一気に話し続けた。そして一呼吸して、話を続けた。


「世界に関与することは出来ない? それ自体も嘘ではないのですか? ……結局、俺たちの存在は、玩具のような物なんでしょう! 神の考えはアデムと大差無いに決まっている!」

「違うよ‼」


 エリーヌが叫んだ。

 瞳から頬に掛けて涙がつたっていた。


「私たちは本当に何も出来ない。見守るだけの存在なの……だからこそ、自分の代わりに世界を良い方向へ導いてくれる使徒が必要なの。私たち神の存在を認識してくれるだけでも、世界はより良い方向へと進んでいるの……これは私たち神が望んでいる本当の気持ちなの」

「そうです。多くの神はエリーヌと同じ考えでいます。本当であれば、全ての神が同じ思想の筈でした……」


 話し終わったエリーヌは顔を手で隠しながら、泣いていた。

 モクレンはエリーヌを慰めるように肩に手を置き、少しだけ話した。


「貴方から連絡を貰った時、私たちはアデムの身柄を確保している最中でした。変に隠した事で猜疑心を抱かせてしまったことには、本当に申し訳御座いません」


 ヒイラギは丁寧に頭を下げて謝罪する。


「アデムの処分は間違いなく致します。又、ガルプ同様にアデムの配下の者がいた場合、同様に処分をすることを御約束致します――信用出来ないのであれば、処分の際に立ち会っていただいても構いません」

「ヒイラギ様‼」

「モクレン。彼はアデムに一度、騙されています。今回も同様だと彼は思っているでしょう」

「しかし――」

「それだけ、アデムやガルプのしたことは大罪なのです」


 ヒイラギは意見を曲げることなく、冷静にモクレンへと説明をしていた。


「それと、アルシオーネとネロについては死亡していません」

「えっ‼」


 ヒイラギの言葉に俺は過敏に反応した。


「機能を停止しただけです。神の権限で再起動すれば、動く事は可能です」


 確かに殺す事が可能であれば、過去に制御不能となった魔王たちも殺せた筈だ。

 敢えて、アルやネロに殺させることは無い。

 機能停止は仮死状態に近いということなのだろう。

 魔物などに食い殺されたり、人族に殺されれば死亡するということなのだろう。


 世界に関与することが大罪だと言うヒイラギの言葉には信憑性がある。

 と、いうことは……。


「もしかして、ロッソやセフィーロも――」

「申し訳ありません。ロッソやセフィーロは殺されていますので、アルシオーネたちとは状況が異なります」

「生き返らないということですか?」

「申し訳ありませんが、そういうことになります」


 一筋の希望の光が見えたと思ったが、それはすぐに目の前から消えた。

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