78話 疾風の鬼姫!
「スゲェな! 一面全てシキブじゃねぇか!」
ギルド会館で、イリアから新聞を見せて貰う。
結婚式翌日の新聞は、一面にシキブの花嫁姿が載っていた。
ローラが撮った写真だ!
見出しも面白く、『鬼姫結婚! とうとう鬼嫁になる!』
この世界では、前世の鬼嫁という言葉の意味は無い。
シキブは女性冒険者の人気ランキングで、毎年上位に入っていたらしい。
知らなかったが、『疾風の鬼姫』と呼ばれて有名人だそうだ。
その鬼姫シキブの結婚。
そして今までになかった『結婚式』という儀式。
ニュースとしては、申し分ないみたいだ。
しかも、シキブの花嫁姿は美しく撮れている。
結婚式の内容も、良く書かれている。
誰もが結婚式を、挙げたくなるような文章だ。
ただ、細かい内容までは書かれていない。
ギルドメンバーの証言も載っている為、想像が膨らむ感じになっている。
気になるのは、最後に『四葉商会』が結婚式を取り仕切っていると、書かれている事くらいか。
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朝からシキブとムラサキには、連絡が入りっぱなしのようだ。
お祝いの連絡が大半みたいだが、他にも関係の無い連絡まであるようだ。
特にシキブは、装備のモデル依頼まで入っていると、イリアが言っていた。
確かにあの写真を見れば、依頼もしたくなるのも分かる。
『四葉商会』も注目の的になっているが連絡先が分からない為、シキブとムラサキに連絡があるらしい。
……色々と迷惑掛けてスマン。
「来ていたのか」
ローラが、階段上から声を掛けてきた。
「あぁ、ローラの写真も好評だな!」
「当たり前だ、研究の際に何枚も撮っているからな」
「そうだな」
「新聞社からも、さっきの段階で売り上げが三倍だと礼を言われたぞ」
「シキブのおかげだな」
「たしかにな、それと『四葉商会』の問い合わせがかなりあるみたいだ」
「今はそれどころじゃないんだけどな……」
一応、『四葉商会』の名はこれで知られる事になった。
暫くは商売うんぬんよりも、スキル値を貯める事を優先にしないと死ぬ可能性があるので、何もしないでおこう。
逆にその方がミステリアスっぽいので良いかもしれない。
特に、これといった商売をする訳でもないしな……
「タクト~」
シキブも上から下りて来た。
酷く疲れきっている様子だ。
「……よう!」
とりあえず、挨拶をする。
「もう駄目、疲れた……」
シキブが弱音を吐いている。
先ほど聞いたとおり、引切り無しに連絡が入っているそうで、ギルド本部にはこの件に関しては連絡しないように伝えると、少しは減ったそうだ。
「昨日は天国、今日は地獄って感じよ」
「それは、スマン」
「本当に、タクトが動くとトラブルも一緒に着いて来るみたいだわ」
「そうか?」
「たしかにそうですね」
イリアもシキブに同調する。
全面否定しようと思ったが、シキブの顔を見ていたらとても言えそうに無かった……