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783話 王都襲撃-5!

「まさか、四精霊のうち、三精霊まで契約をしているとは驚きましたよ」


 プルガリスの声が響く。


「流石はランクSSSの冒険者といったとこですか?」

「姿を現わしたら、どうだ‼」


 俺は空に向かって叫ぶ。


「ふっ、ふふふふふ――ははははは」


 俺の声が響いているのか、プルガリスは笑い声が響き渡る。


「冒険者タクトによって、救われたと思っている愚かな人族よ」


 先程以上に大きなプルガリスの声が響く。


「タクトよ。あなたは何故、そこまで人族を守ろうとするのですか?」

「当り前だろう! 俺は人族だ‼」


 プルガリスに言葉を返すと、俺の声が少し遅れて空より聞こえて来た。

 俺の知らないスキルを使用しているのか?


「なるほど、確かにそうですね。しかし、あなたの本心ですか?」

「……どういうことだ」

「それは、あなた自身が良く御存じなのでは?」


 プルガリスが何を言いたいのか、俺には分からなかった。


「ふふふふふ。あなたは、この国……いや、この世界を救ったことさえ、忘れられているではありませんか?」

「何を言っている!」

「あぁ、そうですよね。自分から、そうしたんでしたね」

「……なんのことだ⁉」

「なんのこと? ……あぁ、そういうことですか。私から、何も知らない人族の皆さんに教えてあげましょう」

「やめろ‼」


 俺は反射的に叫ぶ。

 絶対に知られてはいけない。


「禁忌を犯してまで、守りたかったのですから知られたくは無いのですよね?」

「そんなものは無い!」


 俺は必死で否定をする。


「そんな冗談を言うほど必死なのですね。面白いですね」


 俺は否定する言葉を叫ぶが、俺の声が響く事は無かった。


「エルドラード王国の国民よ、教えてあげましょう。冒険者タクトは、禁忌を犯して、私たちが殺した――」

「やめろーーーー‼」


 俺は大声で叫ぶ。


「第一王女であるユキノを生き返らしたのですよ!」


 俺は自分の無能さに腹を立てる。

 そして、決してユキノに知られてはいけないことを知られてしまったことを悔いる。


「何を驚いているのですか? あなたたちはタクトが、国の為にゴブリンロードにオークロードを倒したのに、その功績も忘れられているではありませんか?」


 騎士団たちが、ざわついているのが、背中越しでも良く分かる。


「そのせいで、タクトは魔王になってしまったのですから、皮肉なことですよね」


 既にユキノのことが知られた今の俺にとって、俺が魔王になったことなど、どうでもいい事だった。

 しかし、魔王という言葉に騎士たちは過剰な反応をしていた。

 王都に居る人々の動揺はそれ以上なのだろう……。


「自分を犠牲にしてまで、人族は本当に守る価値があるのですか?」


 俺は答えることなく、姿が見えないプルガリスを想像するように、声のする空を睨みつけていた。

 精霊たちは、俺と同じように空を見ていた。


「私たちが、声の主を探してきましょうか?」

「出来るのか?」


 ミズチが笑みを浮かべると、アリエルやノッチと共に俺の前から消える。


「主!」

「御主人様!」


 心配したクロとシロが駆けつけてくれた。


「冒険者のたちは全て、街に避難しております」

「負傷者の治療も殆ど終えました」

「そうか……ありがとうな」


 俺は二人に礼を言う。


「シロ。悪いが、ユキノいや、国王たちを守ってくれるか?」

「はい、御主人様」

「クロはプルガリスの居場所を探してくれ」

「承知致しました。それと……ピンクーは主の元にお返ししても宜しいでしょうか?」

「ピンクーを?」

「はい」


 クロが意見を言うくらいなので、何か考えがあるのだろう。


「分かった。ピンクー」


 俺は手を出すと、ピンクーが手の平から腕へと登り、左胸のポケットに入り込む。

 少し不安そうだが、ピンクーも覚悟を決めているようだった。


 王都に魔物が入れないようにしたが、プルガリスからの攻撃を懸念していた。

 もし、ユキノが死ぬことがあれば、もう一度生き返らせることは出来ない。

 絶対に阻止しなければならない。


 俺は以前にエリーヌからの言葉が頭に浮かぶ。

 そう「俺とは相性が悪いと思うから気をつけろ」ということだ。

 戦いの相性だと思っていたが、全てにおいて相性が悪いということだと理解した。

 俺が絶対に許すことが出来ない相手。第五柱魔王プルガリス、この名を何度も呟く。

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