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776話 サボり癖!

 アルからの連絡が無い。

 必死で先代グランニールいや、エビルドラゴンを探し回っているのだろう。

 アルをもってしても、未だに見つからないことは気になるところだ。

 ネロも心配しているようだ。

 ゴンド村の村人たちに、アルは用事で暫く戻って来ないとだけ伝えている。

 村人たちも魔王であるアルだから、多忙だと思っているので気にすることも無かった。


 俺は特訓中のピンクーの元へと向かう。

 シロとクロに鍛えられて、どこまで強くなっているのだろうかと期待をしていた。

 甘えを許さないシロとクロだから、サボろうとしても許してもらえないだろう。



「親び~~~ん!」


 俺の姿を見るなり、クロとの特訓中にもかかわらず、凄い勢いで走って来た。


「もう、無理です。明日にでも死んでしまいます」


 大きくクリクリした瞳は潤んでいた。

 今すぐにでも、特訓を止めたい気持ちのようだ。


「……強くなったのか?」

「もう、十分に強くなりました」

「本当か?」


 俺はピンクーのステータスを見る。

 ……はぁ~~~。


「強くはなっているが、まだまだだぞ」

「もう、十分ですよ~~~」


 必死で特訓を終わらせるよう懇願してくる。


「まぁ、引き続き頑張ってくれ」

「親びーーーーーん‼」


 ピンクーの魂の叫びが、森の中に響く。


「ピンクー。続きをしますよ」


 クロが強引にピンクーを連れ戻しにくる。


「嫌です~~~。疲れたので、休憩をしたいです」

「駄目です」

「いやーーーーー‼ 殺されるーーーー!」


 クロに引きずられながら、元の場所へと戻って行く。

 引きずられるピンクーは、必死で抵抗していた。

 まるで、駄々をこねる子供のようだった。


「お疲れ様です、御主人様」


 ピンクーと入れ替わるように、シロが俺の横に来る。


「ピンクーは、強くなったのか?」

「少しだけですが……」


 先程、ピンクーのステータスを確認した。

 以前に確認した時、レベルは『十一』だった。

 そして今回は……『レベル十六』。

 思ったよりも上がっていない。

 俺の従者なので、俺のレベルアップの恩恵もあり、レベルアップも早くなるはずだ。


「シロ……俺がピンクーとの特訓から離れる前に比べて、レベルがどれくらい上がった?」

「はい。四つ上がりました」


 アルとネロとの特訓で俺自身のレベルも上がっている。

 それに比例して上がっていることは確認出来た。

 シロでさえレベルが四つ上がっているのであれば、シロよりレベルが低いピンクーはもっとレベルが上がってもいい筈だ。

 不思議だと思いながらも話を続ける。


「理由を付けてサボろうとしていますね。やる気があるのかないのか、分かりません」

「……大変そうだな」

「私よりクロさんが、やる気になっていますね。御主人様の従者として恥ずかしくないようにするそうですよ」

「それは頼もしいな」


 熱心な指導者に、サボり癖のある受講者の関係になる。

 お互いの間にある熱意が大きく違うのだろう。

 ただし、ピンクーも「嫌だ、嫌だ」と言いながらも、クロやシロの指導を受けているので、本心から嫌がっていないのではないだろうか?


「彼女は新しい技などを覚えると、楽しそうにするのですが、反復作業のような面白みのない特訓などは消極的ですね」

「そうなのか……」


 シロの言葉だけで、その状況が手に取るように分かった。

 シロとクロに対して、ピンクーを任せたことが申し訳なく感じた。

 言い方は悪いが、不良債権を預けたような気分だ。


「この特訓も一旦、切り上げるしかないな……」

「心配事ですか?」

「あぁ、礼の紅月と黄月の件だ」

「そうですか。私たちに出来ることありますか?」

「まぁ、何も起きないのがいいんだが……何が起こるか予想も付かない」

「その為に御主人様は準備しているんですよね?」

「まぁ……」

「それ以外でも、気になることでも?」

「……ちょっとな」


 アルが探しているエビルドラゴンのことも、シロやクロに協力して貰うことも出来るが……。

 まぁ、アルは断るだろうが、少しでも力になりたい。

 師匠としても頼って欲しい気持ちもある……。

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